季節の行事
貴船神社
収穫に感謝し、厄除けを祈る冬の火祭り
社前にて火を焚く神事の一つで、京都では「お火焚き」と呼ばれています。お火焚きは江戸時代から人々に親しまれてきた冬の火祭です。秋の実りに感謝し、厄除けを祈願するもので、その起源には諸説ありますが、宮中行事である新嘗祭に由来するとも、太陽の力が一年で最も弱まる冬至に合わせて行われることから、その復活を願ったことに起因するとも言われています。願いを書き入れた護摩木(火焚串)などが、焚き上げられ、炎と煙が立ち上る様子は圧巻。神楽の舞を行う神社もあり、お火焚きの荘厳さだけでなく、これらも見所のひとつとなっています。
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多彩な神事
貴船神社
火おこしや神楽奉納などが行われることも
神社によって神事の内容はさまざま。貴船神社では、本殿でロクロヒキリと呼ばれる道具で火をおこす、火鑚神事(ひきりしんじ)が行われます。伏見稲荷大社は、全国から寄せられた10数万本の願い事が書かれた火焚串を3基の火床で焚くスケールの大きさでも知られています。また京都ゑびす神社では神殿の前で湯立神楽の奉納が行われます。日時は神社によって異なるので、いろいろなお火焚きをまわると違いを楽しめそうです。
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さまざまなお供えもの
花山稲荷神社
お火焚きに投げ入れる神社も
火焚祭をおこなっている神社は京都市内にたくさんありますが、花山稲荷神社の火焚祭はその昔、一条天皇の勅命により花山稲荷神社の埴土で鞴(ふいご)を築き名刀子狐丸を鍛えた三條小鍛冶宗近の故事に因んで斎行される祭です。崇敬者から奉納された火焚串を3,4人がかりで1本1本丁寧に鞴の形に積んで焚きあげ、火が鎮まりかけたところでみかんを投げ入れ、集まった人たちが争って拾ってゆきます。このみかんは中風封じや風邪薬としての効能があると言われています。
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お火焚き饅頭
3連の炎の焼印が特徴
お火焚きのころになると、京都の和菓子店やお餅屋さんに登場するのが、「お火焚き饅頭」というお菓子。小さくて丸いふかし饅頭に、炎が3つ連なった大きな火炎宝珠の焼印が押されています。ほどよく塩味がきいた餡が中に入った素朴な味わいのおまんじゅう。京都の人々は収穫に感謝し、厄除けの思いを込めていただきます。
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かまど祓い
車折神社
護摩木の組み方に注目
車折神社の「火焚祭」では、かまどの神様である奥津彦、奥津姫を迎えて行われる「かまど祓」が行われます。かまど型に火焚串(護摩木)の組みあげるのが特徴です。4カ所から火を入れ、燃える炎に、豊かな実りに感謝し、厄除けなどを祈念します。神事の後は、新米で作ったおかゆの振る舞いも(数量限定)。
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季語として
貴船神社
俳句に詠まれるお火焚き
お火焚きは11月の季語として、数多くの俳人に句を詠まれています。「御火焚や霜うつくしき京の町」(与謝蕪村)や「お火焼や塵にまじはる箒の神」(椎本才麿)、「御火焚や蜜柑ころがる潦」(中川四明)など。俳句の世界観を通して神事を見ると、昔からお火焚きを通じて、季節の移ろいを感じていたことが伝わってきますね。
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