旅のカタチ

京都の調味料巡り旅 酢・醤油

伝統的な醤油造りや酢造りを行う老舗を巡って、京都の食に欠かせない調味料を買いそろえる旅はいかが。調味料作りを体験したり、調味料を使った意外な食べ物に出合ったり、調味料を通じたさまざまな楽しみ方をご紹介します。「帰ったら何を作ろうか」。2人でそんな会話が弾むのも嬉しいところ。京都の味を食卓に運ぶ、おいしいプランです。

モデルコース

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PICK UP SPOTは、メインスポットの前後での立ち寄り先候補としてご紹介するスポットです。ぜひいろいろと組み合わせ、あなただけのオリジナルコースを作ってみてください。

伝統的な醤油造りを継承 「澤井醤油本店」

醤油

古い木樽が並ぶ京町家の店内で醤油造りの歴史を感じる。

写真1:澤井醤油本店

京都御苑のほど近くに店を構える澤井醤油本店は、明治12年(1879)の創業。工房も兼ねた京町家の店からは、香ばしい醤油の匂いが漂い、店の前に立つだけで鼻孔をくすぐります。昔ながらの道具と手法を守り丁寧に造られる醤油は、京都の料理店や家庭の味を支える調味料として愛されてきました。

もろみがふつふつと泡を出して発酵する様子を見学。

写真2:澤井醤油本店
写真3:澤井醤油本店
ふつふつと泡を出して発酵するもろみ

店に入ると、古い大きな木樽が目に飛び込んできます。5代目店主の澤井久晃さんに話を伺えば、樽は100年以上の年月を刻んでいるそう。今も現役で使用されており、樽の中では大豆や小麦、食塩に麹を加えて造られたもろみが発酵・熟成しています。その期間は現在で約2年間。熟成期間は醤油の種類によって異なるといいますが、最も麹菌が活発に動く夏を2回超えると、よりコクがある味わい深い醤油になるそう。醤油造りに想像以上の年月と手間がかかることに驚きます。また、店に置かれている樽は京都の間口の狭さに合わせて細く作られており、“京細(きょうぼそ)”と呼ばれる形なのだとか。そんな京都ならではのエピソードも旅の気分を盛り上げます。職人が長期間かけて行うもろみ造りですが、澤井醤油本店ではほかの工程も手作業が基本。なかでも48時間付き切りで行われる麹菌を育てる作業は、最も大変な仕事なのだそう。最後に醤油の味と香りを決定づけるといわれる“火入れ”も、昔ながらの釜で薪をくべて行っています。

かわいい小ビンは お土産にもぴったり!

十石舟を運航する濠川

左からイタリアンもろみ864円、さしみ醤油442円、もろみ醤油1,620円。

写真4:澤井醤油本店
写真5:澤井醤油本店

澤井醤油本店の豊富なラインナップの中で特に人気が高いのは、火入れを行う前の生醤油に再び大豆と小麦を入れて熟成させる“再仕込み”という製法で造られた醤油。旨みが強く色も香りも濃厚で、さまざまな料理の味付けと風味付けに使える万能な調味料です。伝統の味を伝えながらも、近年は新しい商品も誕生しています。思わず手に取りたくなるかわいらしい小ビン入りの醤油は、観光客に人気です。
現在の店主が商品化した「イタリアンもろみ」はもろみを日本産のバルサミコ酢やオリーブオイルなどと混ぜてペースト状にしたもの。和え物や炒め物、スープなど、和風・洋風問わず幅広い料理に使える一品です。作る料理を想像しながらあれこれと選ぶ楽しい時間も、旅の思い出のひとつになるでしょう。家に帰ったら、ぜひ夫婦そろって食事の支度を楽しんでください。

COLUMN

チャレンジしたい!
おすすめ京料理

イラスト:おばんざい

京都では、家庭などで日常に食べられている惣菜のことを「おばんざい」と呼びます。季節の京野菜などを用いて作るおばんざいにはさまざまな種類がありますが、味付けは一般的に薄味。京都で「たいたん」と呼ばれる煮物の多くはカツオや昆布で出汁をとり、淡口醤油で仕上げています。夏には「万願寺とうがらしとしらすのたいたん」、冬には「だいこんとお揚げのたいたん」などがおなじみの一品。京都の醤油を使って、自宅でたいたん作りに挑戦してみましょう。

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PICK UP SPOT

西京味噌の名付け親

老舗でMyポン酢作り 「孝太郎の酢」

醤油

人気のMyポン酢作りで老舗の味を贅沢にアレンジ。

孝太郎の酢

創業180余年の伝統を受け継ぎ、昔と変わらぬ製法で時間をかけて造る酢が、京都の台所を支えている「孝太郎の酢」。こちらの店では購入するだけでなく、自分好みのポン酢を作ることができます。
最初に店の人気商品、だいだいポン酢・すだちポン酢・ゆずポン酢の3種を味見して、自分が作るポン酢の種類を決めます。今回はそれぞれ、だいだいポン酢とすだちポン酢をセレクト。酢と合わせた出汁に少しずつ柑橘の果汁を加えて、自分好みの味に仕上げていきます。まずは、柑橘果汁35%の割合からスタート。そこから約5%ずつ果汁の割合を高めていき、味見を繰り返して好みの味を探します。5%と聞くとそれほど違いがないような印象を受けますが、風味豊かな柑橘を使っているため想像以上にポン酢の味が変わります。二人であれこれ話し合いながら、味を決めていってください。もしかすると、味の好みの違いがあらわになるかも……?

柑橘果汁を少しずつ加えて好みの味を二人で探そう。

写真1:孝太郎の酢
写真2:孝太郎の酢
写真3:孝太郎の酢

今回、店のポン酢のラインナップの中でも1番優しい味の「だいだいポン酢」は50%、すだちを皮ごと圧搾しており酸味がしっかりと感じられる「すだちポン酢」は約40%の割合に決定。完成したポン酢は、その場で360mlの瓶に詰めてもらえます。
ポン酢作り体験はラベルを自分で作成できるのも、楽しみの一つ。オリジナルラベルが付いた手作りポン酢は、二人にとって、格別なお土産となることでしょう。オリジナルのポン酢は自分用だけでなく贈り物としても人気が高く、結婚式の引き出物や内祝いなどの記念品として使われることも多いそうです。また、今回のレシピは保管されるので、今後は電話ひとつで自分のポン酢を注文することができます。

現在の店主が開発した新しい商品にも注目!

現在の店主が開発した新しい商品

左から1番人気の「京風すし酢」669円、「紅芋梅酢」1,620円、「朝のレーズン」「夜のレーズン」各1,296円。

外観:孝太郎の酢
写真4:孝太郎の酢

店が立つエリアは茶道の家元が集う名水どころ。豊かな良質の軟水が、酢造りを支えてきました。酢造りの基本となる米を厳選することはもちろん、ポン酢の味を大きく左右する柑橘は、だいだいは広島産、すだちは徳島産など、香りが強く風味をしっかりと楽しめるものを選んでいます。酢はじっくりと熟成させ、出汁はかつお・利尻昆布・干ししいたけで3日かけてとる。時間をおしまない丁寧な造り方が、深みのある味を生み出しているのです。添加物や化学調味料を一切使用しないというこだわりにも、体に良い調味料を届けたい、という思いを感じます。

PICK UP SPOT

絶品油がよりどりみどり

一子相伝で受け継ぐ味