かつては伏水(ふしみ)と表記されていたほど、質の高い伏流水に恵まれていた伏見。ここでは水という切り口から伏見の歴史や風土を学び、グルメを満喫するプランを紹介します。十石舟にのんびり揺られた後は、伏水酒蔵小路で名水から作られた地元の酒の飲み比べを。昔ながらの酒蔵が立ち並ぶ風情ある街を、ほろ酔い気分で散策しましょう。
※右に横スクロールすると全体が確認できます。
PICK UP SPOTは、メインスポットの前後での立ち寄り先候補としてご紹介するスポットです。ぜひいろいろと組み合わせ、あなただけのオリジナルコースを作ってみてください。
歴史を学ぶ水上の旅 「十石舟」
安土桃山時代から江戸時代にかけて開発が行われ、京都と大阪を結ぶ水運の拠点として栄えた伏見。酒造りが盛んになると、伏見の川には酒やその原料となる米などを運ぶ輸送船などが行き交いました。現在運航している十石舟は、屋形船仕様の遊覧船。酒蔵が立ち並ぶ伏見の街に溶け込み、水上をゆるやかに進む姿は、見るものの旅情をかきたてます。
月桂冠大倉記念館の南側、弁天橋の下が発着場。定員20名という小さな船ですが、20分毎に運航しているので、混んでいた場合も次の便はすぐにやってきます。
十石舟が運航する濠川(宇治川派流)は宇治川へと流れ、淀川に通じる川。かつてここを多くの船が行き交い、付近は船着場として賑わったといいます。船内ではそんな伏見の歴史や見どころを、アナウンスを流すだけでなく、ベテランの船頭さんがガイドしてくれるのも魅力です。ゆっくりと進む船から、白壁と焼き杉板の外壁が美しい酒蔵を眺めて、ありし日の伏見に思いを馳せましょう。
幕末の歴史の舞台ともなった伏見には、現在もその名残を感じられる場所が数多く残ります。そのひとつ、坂本龍馬ゆかりの寺田屋を過ぎると、左手に伏見みなと公園に立つ龍馬と妻のお龍の銅像が見えます。龍馬とお龍はここから三十石船に乗り、日本初といわれる新婚旅行に出発したのだとか。少しでも同じ航路を夫婦でたどっているのだと思うと、思わず気分が高まります。
春から秋にかけて運航される十石舟は、四季折々の風景を楽しめるのも特徴。春は桜、初夏はアジサイ、秋は紅葉と、川岸の植物で移りゆく季節を感じることができます。特に桜の時期は人気が高く、連日満席が続くそう。水面につきそうなほど垂れ下がる柳の並木も見応えがあり、景色に風情を添えています。
船は15分ほどで折り返し地点の三栖閘門(みすこうもん)に到着。ここで一旦下船し、三栖閘門資料館を見学します。宇治川と濠川の合流地点に設けられている三栖閘門は、かつて門を開閉して水位を調整し、船の往来を実現させていました。復路では往路とは違う方向からの眺めを楽しみ、約45分で船着場へ。短い時間ながら伏見の歴史をたっぷりと楽しめるので、あまり時間がない人にもおすすめです。
伏見の地酒を飲み比べ 「伏水酒蔵小路」
豊かな水に恵まれた伏見で、古くから行われてきた酒造り。安土桃山時代には伏見城の城下町、江戸時代には舟運の港町として栄えるとともに、造り酒屋が増え、銘醸地として全国に知られるようになりました。今でも伏見の街を歩けば至るところで昔ながらの酒蔵を目にすることができます。散策中、おいしい日本酒が飲みたい気分になったなら、地酒の飲み比べが楽しめる伏水酒蔵小路はいかがでしょうか。 2016年にオープンして以来、日本酒好きから熱い支持を得ているスポットです。
8店舗の飲食店が集合している伏水酒蔵小路はその名の通り、小路に店が並んでいるかのような雰囲気。メインの酒蔵カウンターは23mもあり、目線の先の棚に美しくディスプレイされた日本酒の一升瓶が印象的です。ここでの名物は何と言っても、伏見の蔵元の酒が飲み比べできる「十八蔵のきき酒セット 粋酔(きっすい)」。すっきりとした口当たりの酒から通好みの一杯まで、日本酒の味の豊かさも実感できるセットです。前菜からメイン、デザートまで、それぞれの料理との相性を考えて選ばれており、このセット一つで食事を最後まで楽しむことができます。1個のグラスには約20ml入り、全部飲んでも2合弱。夫婦2人でシェアするのにもぴったりの量です。酒蔵カウンターではほかにも、常時100種類以上の銘柄の日本酒を用意しています。
「自家製燻製5種盛り」1,090円。
寿司店「大ちゃん」のにぎり8貫1,200円。
伏水酒蔵小路では酒だけでなく、炭火焼き料理や寿司、もつ鍋、イタリアンなど、8店舗のバラエティー豊かな料理を味わえるのも魅力。また全店舗でほかの店の料理を注文できる「出前メニュー」を用意しており、わざわざ店を移動しなくてもさまざまな味を楽しむことができます。しかし、なかには店に足を運ばないと注文できない料理も。夫婦二人で千鳥足、ぶらりぶらりとハシゴ酒もおすすめです。
広い敷地内にはイベントスペースもあり、月に1〜2回ほどイベントが開催されています。女性唎酒師が企画する「日本酒とスイーツを楽しむ会」などユニークな催しも多く、日本酒のイメージががらりと変わる、驚きの企画も。イベントを目当てに訪れ、ほろ酔いで店を巡るのもよいでしょう。店には普段でも唎酒師など日本酒通のスタッフがたくさんいるので、日本酒について教えてもらったり、好みに合わせておすすめの一杯を提供してもらったり、日本酒の世界にどっぷりとハマることができます。とくにお酒好きの夫婦にとって、最高のひとときとなること間違いなしです。
伏見の酒造を支える
伏見の名水
水に恵まれた伏見の町では、古くから良質な湧き水が地域の人々の暮らしを支えてきました。現在も汲んで持ち帰ることができる湧き水が多く、日常的に利用されています。町歩きを楽しみつつ、名水が湧くスポットをめぐってみてはいかがでしょうか。
スポット情報はこちらをご覧ください
PICK UP SPOT
仕込み蔵の前で乾杯
-
食・グルメ・ショッピング
酒蔵Bar「えん」
藤岡酒造が展開する日本酒バー。こだわりの酒米と伏見の名水を使い、昔ながらの技法で仕込む「蒼空(そうくう)」の飲み比べができます。「お酒の生まれる場所で、生まれたての『蒼空』を心ゆくまで楽しんでほしい」との蔵元の思いを反映しているだけあって、カウンターのガラスの向こうには、仕込み蔵が。酵母の甘い香りに包まれて、昼間から夫婦で杯を酌み交わせるのも一興です。お酒が飲めない人は、蒼空の吟醸粕で造った「自家製酒粕アイスクリーム」や「甘酒」などを。
地ビールと日本酒のテーマパーク
-
食・グルメ・ショッピング
キザクラ・カッパカントリー
企業博物館やレストラン、ショップが併設する複合施設。「黄桜記念館」では、酒造りの工程や河童にまつわる資料が展示されています。また、昭和30年代からの黄桜のテレビCMの上映もあるので、二人で懐かしい気持ちになれるはず。レストラン「黄桜酒場」では、酒蔵の名残りを感じる店内で、京都地ビールのさきがけとなった「黄桜麦酒」をはじめ、黄桜の各種日本酒を京料理とともに堪能。黄桜のお酒がたくさん並ぶ「黄桜商店」には、黄桜麦酒のほか、黄桜が展開する食品も並んでいます。
日本酒の歴史と文化を感じる
おだしの魅力を再認識
-
食・グルメ・ショッピング
おこぶ北淸
創業100年を超える昆布の老舗が手がける「おこぶ北淸」。おだしにこだわった料理を、昼はカフェ、夜はバルスタイルで楽しめます。ランチでは、「おこぶの出汁茶漬け定食」が人気。夜は約20種のおばんざいをアテに、地元・伏見の日本酒をいただけます。焼きおにぎりには、塩昆布を炊いた残り醤油を塗るなど、昆布やだしの新しい味わい方を提案してくれるのもうれしいポイントです。隣の販売店舗で、昆布やカツオをお土産に買うのもよいでしょう。