
「邦楽」の「邦」とは、「わが国」のこと。そのため、伝統音楽もJ-POPも、大きくは同じ括りです。そもそも「邦楽」の定義はとても曖昧で、専門に研究をされている先生に伺っても「邦楽とは何か……それは究極の質問ですね」と言われてしまうほどです。
ひとまず、ここでは、現代の私たちにも比較的親しみやすくバリエーションの多い、江戸時代に育まれた音楽(近世邦楽)を主な対象として、それらを「邦楽」と呼んでいる、という理解で進めていきます。J-POPや日本人によるロックと区別するために、「純邦楽」と呼ばれることもあります。
邦楽の種類・ジャンルの
一部を紹介します

宮廷や公家、寺社で育まれた音楽。東アジアからの外来音楽と、日本古来の音楽があります。前者は、主に中国の唐楽(とうがく)と朝鮮の高麗楽(こまがく)に由来する器楽合奏。後者は、神楽(かぐら)、東遊(あずまあそび)、催馬楽(さいばら)など、うたを伴うものがあります。篳篥(ひちりき)、笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)など管楽器が大活躍しますが、琵琶、箏(こと)、和琴(わごん)など弦楽器のほか、羯鼓(かつこ)など打楽器の種類も豊富です。


南北朝から室町時代にかけて、観阿弥・世阿弥によって大成された、優美な象徴劇。立方(たちかた)〈シテ方・ワキ方・狂言方〉と囃子方に分かれて演じます。シテ方に所属する地謡が、さまざまな物語をうたいます。囃子方は、笛(能管)・小鼓・大鼓・太鼓を演奏します。

能と同じ舞台で演じられる喜劇。江戸初期から能とともに幕府の式楽になり、能の狂言方として発達しました。写実的な演技により、おおらかに滑稽に人間の姿を描きます。


仏教の法会(ほうえ)儀式で僧侶がフシをつけて唱える声楽のこと。仏教とともに中国から伝わり、日本で独自に発達しました。仏や徳を讃えたり、その名を連呼するものや経典にフシをつけたものなどがあります。

江戸時代に成立した音楽の通称。声楽の種目が圧倒的に多いです。そのため、声楽的特徴と歌詞内容の側面から「歌い物」と「語り物」に分類されることがあります。

主に京都と大阪で発達し、三味線を伴奏に用います。16世紀なかば、小編の歌謡や流行歌などを芸術化した「三味線組歌」をルーツとし、箏曲と関連しながら展開したので、落ち着きと品の良さが特色。京都には、柳川三味線という古態の楽器と曲目が現存します。


十三弦の箏を主奏楽器とする音楽。地歌と関連しながら発達し、京都の八橋検校(やつはしけんぎょう)によって大成されました。声楽の伴奏のほか、楽器だけで間奏を行う「手事(てごと)」が発達して魅力が高まりました。「六段」など独奏される曲も多いですが、三味線・胡弓(のちに尺八)との「三曲合奏」も。

江戸歌舞伎の舞踊曲として発達した音楽。歌舞伎の演劇的多様性のため、軽快なものからしっとりしたものまで、曲目や曲風は多様。歌舞伎の効果音楽〈黒御簾(くろみす)音楽〉にも使われます。

三味線伴奏の語り物音楽。人形芝居や歌舞伎と提携して発達し、現在は「義太夫節」「常盤津節」「新内節」「清元節」の4種目が主流です。浄瑠璃方(太夫)と三味線方の分業を基本とします。
実はこれも邦楽が
由来のことばたち
「仕事にメリハリを」などと使うことが多いのでは? 本来、「音声を緩めることと張り上げること」を意味していることばです。邦楽用語のひとつである〈減り上り(メリカリ:「メリ=減り」は低い音を表し、「カリ=上り」は高い音を指す)〉が転じ、「メリハリ」と一般にも使われるように。
会話などの進行を促すために、話の合間にことばを挟むことを指す「合いの手を入れる」。この「合いの手」は、邦楽で歌と歌との間に、三味線などの伴奏楽器だけで演奏する部分のことを言います。それが一般にも広がり、今のような使われ方をするようになりました。

邦楽の演奏に用いられる、
和楽器の一部を紹介します!
※詳しく知りたい方は
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弾きもの




吹きもの




打ちもの





イラストレーター・細川貂々さんに、邦楽を鑑賞いただきました。
「はじめての邦楽鑑賞会」
漫画:細川貂々
(全4ページ)
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※デジタルブックではページの拡大ができます。
「邦楽」を
どこで見る!?

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監修
竹内有一(京都市立芸術大学)
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イラスト
小幡彩貴
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漫画
細川貂々
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デザイン
いわながさとこ
2015年10月 京都市文化市民局 文化芸術都市推進室 文化芸術企画課発行 「邦楽入門の入門」から一部抜粋して作成しました。
