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駒札・歌碑

かにかくに碑

かにかくに碑

かにかくに 祇園はこひし 寐(ぬ)るときも
                枕のしたを 水のながるる
 この歌は,祇園をこよなく愛した歌人として知られる吉井(よしい)勇(いさむ)(一八八六~一九六〇)が明治四十三年(一九一〇)に詠んだ一首で,彼の歌集「酒ほがひ」に収められている。
 当時は白川の両岸に茶屋が建ち並び,建物の奥の一間は川の上に少々突き出ており,「枕のしたを 水のながるる」はその情景を詠んでいる。しかし,第二次世界大戦下の昭和二十年(一九四五)年三月,空爆の疎開対策に白川北側の家々は強制撤去され,歌碑が建っているこの地にあった茶屋「大友(だいとも)」も犠牲になった。大友は当時の文人,画人たちと幅広く交流のあった磯(いそ)田(だ)多(た)佳(か)の茶屋である。
 昭和三十年十一月八日,友人たちにより吉井勇の古稀(七十歳)の祝いとして,ここに歌碑が建立された。発起人には,四世井上(いのうえ)八千代(やちよ),大谷(おおたに)竹(たけ)次郎(じろう),大佛(おさらぎ)次郎(じろう),久保田(くぼた)万太郎(まんたろう),里見(さとみ) 敦(とん),志賀(しが)直哉(なおや),新村(しんむら) 出(いずる),杉浦(すぎうら)治郎(じろう)右衛門(えもん),高橋(たかはし)誠(せい)一郎(いちろう),髙(たか)山(やま)義(ぎ)三(ぞう),谷崎(たにざき)潤一郎(じゅんいちろう),堂本(どうもと)印象(いんしょう),中島(なかじま)勝蔵(かつぞう),西(にし)山(やま)翠(すい)嶂(しょう),湯川(ゆかわ)秀樹(ひでき),和(わ)田(だ)三(さん)造(ぞう)などそうそうたるメンバーが顔をつらねた。
以来,毎年十一月八日には吉井勇を偲んで,「かにかくに祭」が祇園甲部の行事として行なわれている。
                                 京都市

基本情報

正式名称 かにかくに碑
住所・所在地 東山区元吉町

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