夜観光のススメ

2025年03月31日(月)

夜観光

【京都・夜観光のススメ企画(③夜のアートスポット)】京都の「アートギャラリー」に行こう~同時代ギャラリー~

1928ビル内で現代美術を楽しむ 【同時代ギャラリー】

夜の帳がおりるころ、京都は昼と違う表情を見せてくれます。このコーナーでは、ミニシアター、書店、ギャラリーなど、夜に訪ねたい文化スポットをご紹介します。今回は「同時代ギャラリー」。近代建築が多く残る三条通の「1928ビル」の2階にあるギャラリーです。同時代を生きる表現者とともに、社会のありようや生き方を問う場でありたいと、アジアや欧米との文化交流を積極的に行っています。コアな美術ファンだけでなく、幅広い人が現代美術を楽しむことができる大型のギャラリーです。

星形のバルコニーがお出迎え

 夜の1928ビル。ライトアップされた様子に心ときめきます

 同時代ギャラリーがある1928ビルは、寺町三条の西にあるクリーム色の古い建物です。ライトアップされた星形の窓やバルコニーはチャーミングで、胸がときめきます。もうすぐ100年を迎えるこのビルの設計者は、「関西建築界の父」といわれる武田五一。もともと大阪毎日新聞社京都支局ビルとして建てられ、1928年に完成。1983年に京都市登録有形文化財に指定されました。



かつては毎日新聞社の移転に伴い、ビル取り壊しの危機に直面したことがありました。この危機に対し、当時1階にあった「同時代ギャラリー」は、アーティストたちと共に歴史的な建物の魅力と価値を広めることで1928ビルを存続させ、文化発信の拠点にしようと立ち上がります。その頃、偶然ギャラリーを訪れた建築家の若林広幸さんが、このビルに惚れ込み、建物を買い取ることに。リノベーションを施し、現在の「1928ビル」の姿に至ります。



そんな同時代ギャラリーは、1996年に「同時代性」をキーワードに誕生しました。現在ギャラリーを運営するのは、株式会社同時代代表取締役の髙尚赫さん。京都の東九条で生まれ育ち、ご自身も画家として活動されています。これまで、数々の展覧会を主催。美術運動を通じて、有名無名を問わず、世界のアーティストたちを日本に紹介してきました。その後、同時代ギャラリーのアートディレクターとなり、現在に至るまで、新しい作家の方々を育てる活動を続けています。

中国や韓国のアーティストの作品も展示されていました

「京都で展覧会を開きたいという海外の作家は多いです。展覧会のために来日され、空き時間に京都のいろいろな所を回ることで、それをまた作品づくりに活かすという方も。京都の展覧会が、そんな風に作家を育てていることも嬉しい」と高尚さんは話します。

4つのギャラリーで作品を展開

同時代ギャラリーの展示は、すべて無料で見ることができます。レトロな階段を上がって、まずは展示室へ。展示室は全部で4室あります。2025年2月に私が訪れたとき、最も広い展示室「ギャラリー」では、写真展「時の肖像」が開かれていました。
兵庫県加西市の写真家・大森康裕さんが、廃棄物や不法投棄されたもの、観光客でにぎわう大阪の風景などを撮影、さまざまな被写体の物語性を表現した展示内容でした。

 「ギャラリー」は広くて重厚な雰囲気

 兵庫県加西市の写真家・大森康裕さんと大阪の風景写真

大森さんは「写真の面白さは、カメラのレンズを通すと、肉眼で見た時とまったく違う画像に写ること。今、私たちが生きているこの時代を表現してみました」と語ります。
作家の方が在廊している時は、気軽にお話ができるというのもギャラリーの魅力の一つ。作家とお客さんが会話し、交流し、刺激を受ける場でもあるのです。
次に広い展示室「ギャラリービス」は、大きなガラス窓があります。この日は部屋を二つに区切り、中国人作家と韓国人作家の展示「一期一会」と、「G2.8写真展 断片集 №29」が開かれていました。

 



同時代ギャラリーのホームページには、英語・韓国語・中国語・フランス語の説明文があるため、海外のアーティストからの個展の問い合わせも多くあります。また、立ち寄るお客様も外国の方が増えているそうです。言葉が通じなくても楽しむことができる、アートならではのことですね。
 また、小さな展示室「コラージュプリュス」ではネパール出身のアーティストによる曼荼羅の作品を展示した「YANGSI」が開かれていました。エントランス前のスペース「アンプリュス」には、お土産にぴったりなアート作品が展開されています。

地下には貴重な泰山タイル

 
もう一つ、同時代ギャラリーに行ったら、ぜひ寄り道したいところがあります。1928ビル地下のカフェ「アンデパンダン」です。ディナーもランチもあり、美味しいお酒やパスタ、パエリアが食べられます。アートイベントやライブが開かれることもあり、いつもにぎわっています。
アンデパンダンでひときわ目を引くのが、壁を彩る「泰山タイル」。1917年から1973年まで、京都市南区の東九条にあった「泰山製陶所」でつくられた建築用の装飾タイルで、美術タイルの最高峰と称されています。清水焼の技術をベースに一枚一枚手作業でつくられ、釉薬が窯変(ようへん)して出る色は、ほかでは見られない美しさ。残念ながら現在はつくられていませんが、実用性と美を兼ね備えた泰山タイルのファンは多くいるそうです。
 

アンデパンダンの壁面は泰山タイルで飾られています

同時代ギャラリーでも、2023年6月、2024年11月に「泰山タイル展」を開催。また、2024年3月には、同時代ギャラリーが運営する東九条のギャラリー「GALLERY GARAGE」で、「泰山タイル里帰り展」を開催。東九条地域の記憶とこれからについて考えるというコンセプトで、展示が開かれました。


 
ビルそのものが美しく、訪れた人を魅了する同時代ギャラリー。表現者と芸術を愛する人が偶然ここで出会い、同じ時間を共有することで、次の時代に続く何かが、新しく生まれるかもしれません。

今回のスポットの基本情報

同時代ギャラリー
【住所】京都市中京区三条通御幸町東入弁慶石町56 1928ビル2F 
【営業時間】12時~19時(展覧会最終日は最長17時まで) 
【休業日】月(祝日の場合は開廊)
【電話番号】075-256-6155 
【HP】

【比較的空いていることが多い時間帯】15時〜17時
【喫煙情報】不可
【お子様の同伴】可
【外国人の方に向けた対応】-
【店内での写真撮影】展覧会によって異なります。在廊する作家、または事務所までお尋ねください。
【お支払い】現金、各種クレジットカード、電子マネー
【予約】不可
【バリアフリー対応】-
【その他】

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今回の記事制作担当

『ハンケイ500m』編集部(株式会社ユニオン・エー)
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