夜観光のススメ

2025年03月31日(月)

夜観光

【京都・夜観光のススメ企画(③夜のアートスポット)】「京都の書店」に行こう~三密堂書店~

長居(ながい)ウェルカム! 寺町通にある創業約100年の古書店【三密堂書店】

夜の帳がおりるころ、京都は昼と違う表情を見せてくれます。このコーナーでは、ミニシアター、書店、ギャラリーなど、夜に訪ねたい文化スポットをご紹介します。
第2回は寺町通にある古書店「三密堂書店」。創業100年を超え、扱っている書物は、仏教書、易学書、文学、漫画、写真集など幅広いジャンルにわたります。「時間をかけて本を選ぶ楽しさを知って欲しい」。そんなお店の思いは、いつしか「この素敵な書店を知って欲しい!」という熱い思いに派生し、今では音楽ライブやクラブイベントなど、古書店では珍しいイベントも多数開催しています。長い歴史を紡ぎながら、新たな取り組みにも積極的。そんなユニークで文化的な古書店です。


 歴史ある看板がライトに照らされ、お店の存在感は抜群

大正時代から親子三代が守ってきた看板

 
京都の繁華街、四条河原町からすぐ近く。観光客や買い物客でにぎわう寺町四条から南へ歩くこと数分。「三密堂書店」の看板が目に飛び込んできました。小さなお店ですが、歴史の重みを感じる佇まいで、存在感は抜群です。
 

初代の森下政治郎さんは、仏書や易学書を扱う書籍商に丁稚奉公に出た経験をいかし、三密堂書店を創業。当初は書籍の販売だけでなく、経本の出版も手掛けていました。三密堂書店が出した本で最も古いものは、大正11年の「神道大祓大全」です。「三密堂」という屋号は、真言宗大僧正の滝承天(新義真言宗智山派管長、智積院五十一世能化)が考案したものだといいます。

 
第二次世界大戦末期は商品もほとんどなく、出版業より古書業に力を入れていました。昭和30年代に出版業を再開し、二代目の森下正三郎さんは仏教学者や易学者との交流に力を入れ、「仏教書と易学書」という三密堂書店の基礎をつくりました。
現在は、古書店として、正三郎さんの息子で三代目の森下正巳さんが店主を務めています。

リニューアルで目指した心地いい店

 
正巳さんは約100年続く三密堂書店の三代目。大学卒業後、音楽活動に夢中になり、店を継ぐつもりはあまりなかったといいます。しかし1995年に阪神・淡路大震災が発生し、三密堂の倉庫にあった本が倒れたり、傷んだりしたため、その整理をしているうちに、自然と店を手伝うようになったそうです。



当時は成人向けの本も多く、女性客が入りにくい雰囲気だった店を、何とかしたいと考えた正巳さん。2006年に本のセレクトを変え、店の内装も親しみやすい雰囲気に改装しました。1階は天然木のフロアに自動扉、2階に古書を修理するための部屋をつくったことで、今の心地よい店内になったそうです。

クオリティの高さに驚く、100円本コーナー

歴史だけ見ると、いかにも敷居が高い、専門家向けの古書店のように思えますが、そうではありません。何といっても、三密堂書店のモットーは「長居(ながい)ウェルカム」。スタッフのアイデアをとりいれながら、お客さんがゆっくり過ごしたくなる店を目指しています。



入口の外でまず目をひくのは、100円本の棚。『秘録 大東亜戦史』、『夫婦(山本周五郎テーマ・コレクション)』、松本清張『犯罪の回送』。100円の棚とは思えない品揃えです。多様なジャンルそれぞれに、こだわりが感じられ、つい立ったまま読みふけってしまいます。
店内には、150円本、200円本のコーナーも。中にはかつてベストセラーになった懐かしいタイトルもあります。

 ジャンルの多さと深さに、こだわりが感じられる100円本のコーナー

事典をはじめとする仏教書、神道関連の本、易学の本はスペースを大きく使い、専門的なものから実用書までさまざま。隅から隅までじっくり眺めていると、いつの間にか時間が経っていました。
かつて、まちの本屋さんに並んでいた書籍が人の手にわたり、何十年も経ってこの書棚に再び並んでいる。そんなことを考えると、自分が選んだ1冊に縁を感じざるを得ません。
 


古い本を扱っているのに、店内はほこりっぽさをまったく感じません。書棚にぎっしり詰まった本は、どれを手にとっても美しく、1冊ごとにきれいに拭かれています。そんなところにも、店主やスタッフのみなさんの本への愛情を感じます。

入口の扉の上にも本が隠れていました

ライブやクラブイベントで非日常の楽しみも

正巳さんは、若いスタッフのみなさんから出てくるアイデアを積極的に採用しています。そのおかげで、三密堂書店で、時々ユニークなイベントが開かれます。そのひとつが「深夜営業」。普段の閉店時間は午後7時ですが、この日は0時前まで営業します。しかも、店内は暗い状態で、お客さんはスマホのライトなどを使い、ドキドキしながら掘り出し物を探します。
 


また、音楽イベントを開くこともあります。2024年の7月には祇園祭にあわせて、店内でクラブイベント「三密堂書店とテクノ」が開かれました。レジ台にターンテーブルを置き、DJを呼び、スピーカーから音楽を流してみんなで踊る様子は、まるでライブハウス。とても古書店の中とは思えません。
別の日には、店の前でフォークミュージックのフリーライブが開かれ、外国人観光客が珍しそうに足をとめて見ていました。

 旅行のお土産にと、日本の小説を購入される外国人観光客の方も

クラブイベントを企画した書店スタッフ、デュアーテタイラー光さんは「古書店の醍醐味は、予測できない本との出会い。そのために書棚をじっくり見てほしい。イベントや深夜営業が、古書店に親しむきっかけになれば嬉しい」と話します。
「お目当ての本を探しに来ていただくことは、もちろん嬉しい。でも、偶然出会った本を買って喜んでいただいたら、もっと嬉しい。これからもここでできる面白いことに、挑戦し続けたいです」と、正巳さんは語ってくれました。

今回のスポットの基本情報 

【スポット名】三密堂書店
【電話番号】075-351-9663
【住所】京都市下京区寺町通仏光寺下ル恵美須之町541
【営業時間】11時~19時 
【休業日】年始
【HP】

【喫煙情報】不可
【お子様の同伴】可
【外国人の方に向けた対応】-
【店内での写真撮影】書籍の内容が映り込まなければ可。撮影時はスタッフにお声掛けください。
【お支払い】現金、クレジットカード、QRコード決済など利用可
【バリアフリー対応】-

今回の記事の読者特典

100円本の購入時、「『夜観光のススメ』を読んだ」とお伝えいただいた方に、100円本を追加で1冊プレゼント
※2025年4月30日まで有効

ライター・カメラマン情報

『ハンケイ500m』編集部
京都にあるたくさんのバス停のから、毎号1つをピックアップし、そのバス停を起点に半径500mをくまなく探索。 独自の哲学、ポリシーを持った「職人」気質の方々を発見し、そこから見える多様な価値観を発信するフリーマガジン、『ハンケイ500m』を制作・発行しています。
HP 

今回の記事制作担当

株式会社ユニオン・エー