朝観光のススメ

2024年03月27日(水)

朝観光

【スポット情報】京都酒蔵館別邸~1日の始まりは“京都”を実感する贅沢な朝食を~

京都旅行の朝。ホテルのビュッフェや、カフェのモーニングもいいけれど、せっかくなら京都を感じる朝食が食べたい!という方は多いのではないでしょうか。今回は、早朝から贅沢で京都らしい朝ご飯が食べられるお店を取材しました。

 

銘酒が生まれた酒蔵、京町家を継承

今回紹介する「京都酒蔵館別邸」は京都御所の南、京都では “御所南(ごしょみなみ)”と呼ばれるエリアにあります。
同店は京都府下全域の蔵元より取り寄せた銘酒とそれに合ったお料理などを提供する飲食店。駒寄せ(こまよせ)や虫籠窓(むしこまど)、一文字瓦(いちもんじがわら)などの意匠が特徴の京町家で、玄関前には “こも樽”と呼ばれる沢山の酒樽が並んでいます。
      
この町家が建てられたのは江戸中期。京都伏見の酒造メーカー「キンシ正宗」のかつての酒蔵兼居宅でした。
間口はおよそ26m。堂々たる佇まい。


1781年、初代・松屋久兵衛が同地で造り酒屋を創業。明治期に酒造りの拠点が伏見へ移された後、1995年からは酒造りの道具等、“蔵元の文化的資産”を展示する「キンシ正宗 堀野記念館」として新たなスタートを切りました。しかし、2023年7月に閉館。建物を引き継ぐ形で同年12月に「京都酒蔵館別邸」がオープンしました。

「京都酒蔵館別邸のオーナー自ら蔵元に出向く中で『キンシ正宗』様とのご縁も育まれ、建物の継承についてお声がけいただきました。オーナーの日本酒への強い思いと情熱がこの建物を引き継ぐきっかけになったのだと思います」と話すのは統括支配人の大槻さん。

国の登録有形文化財に指定されている建物の魅力や酒蔵であった歴史を感じていただくために、できるだけ元の姿を残してオープン日を迎えたと言います。

 

元・酒蔵でいただく朝食。京都市内でも希少なシチュエーション  

店内は天井の高い開放的な土間のホールを中心に、かつて酒造りが行われていた「天明蔵」、倉庫として利用されていた「文庫蔵」などがあります。ホールにはテーブル席のほか、長いカウンターが設けられ、壁面には各酒造元の酒瓶がずらり。上部にはお酒の銘板が飾られた居心地の良い和モダンの雰囲気です。


おしゃれなカウンター席

なぜ日本酒をメインとした飲食店で朝食の提供を始めたのでしょうか。

「このエリアは朝ご飯を提供する宿泊施設が少ないんです。せっかくの京都旅行なのに朝食がコンビニのパンや喫茶店のモーニングでは物足りないでしょう。そこで『別邸御膳』(4,791円)と名付けた朝食メニューの提供を始めました。歴史あるかつての酒蔵で朝からゆったりと過ごしていただける店は、京都市内でもなかなかないと思います。」と、大槻さんは語ります。

滞在期間の1日くらいは贅沢な朝食を、と来店される方や、近隣のホテルから団体でお越しになる方々もいらっしゃるとか。個室も用意されているのでグループ旅行でも利用できます。

 

旬の素材をふんだんに使った料理と土鍋で炊いたご飯。料理長心入れの朝ご飯

「別邸御膳」の特徴について、同店の料理長・中嶋さんに教えていただきました。


京料理の老舗で腕を磨いた中嶋料理長

「“京のおばんざい9種盛り”を中心に、焼き魚、旬の野菜の煮物、だし巻き玉子、味噌汁、漬物、デザートとジュース、食後はコーヒーまたは煎茶をお選びいただいています。春は筍、夏は鱧。寒い時季には粕汁や地鶏の茶碗蒸しをおつくりすることもあります」

広く知られる “おばんざい”を中心に、京都ならではの季節感を織り込んだ料理を楽しんでいただきたい、という中嶋料理長の想い、創意と工夫がちりばめられた御膳です。


「別邸御膳」(※日本酒はセットに含まれません)

取材で伺った日は寒さが残る早春。まずは粕汁で温まり、続いて多彩なおばんざいが登場。鯛の昆布じめや白木耳(しろきくらげ)の和え物、ちりめん山椒など。梅の風味が程よくアクセントとなった鰯(いわし)の梅煮は臭みがなく、魚そのものの旨味が口中に広がる美味しさで、丁寧な仕事ぶりが感じられました。

中でも嬉しかったのはご飯です。一人用の土鍋で目の前で炊き上がるご飯は甘みが強く、お米そのものの滋味が感じられました。


およそ20分かけてじっくり炊き上げるご飯

「炊立ては香りが良く、色もつややか。五感で味わっていただきたいのでお一様一合。料理の品数も多く、ご飯が炊きあがるのにもお時間をいただきますが旅先の朝食こそゆったりと過ごされてはいかがでしょうか」と中嶋料理長。女性にはご飯の量が多いかもしれませんがお腹を空かせて来ていただきたい、とも語ります。


まろやかな出汁がひけると、中嶋料理長

こうした同店の食を支えているのが、中庭にある「桃の井」からでこんこんと湧き出る地下水です。雑味のない柔らかな口当たりの水は、かつては「キンシ正宗」の酒造りを、今では同店の美食の礎となっている大切な名水。調理は言うに及ばず、コーヒーや煎茶を淹れるにも欠かせないのだそうです。

 

日本酒がつくられた、そのストーリーをも味わう

「別邸御膳」に日本酒は含まれませんが、せっかくだから1杯飲んでみよう、とオーダーされるお客様のために、料理はお酒に合うものを意識されているとか。「別邸御膳」に合うおすすめの日本酒を大槻さんに教えていただきました。

「例えば、日本酒は余りいただかないという方には、古代米で仕込んだ向井酒造の『伊根満開』(写真・左)はいかがでしょう。ロゼワインのような赤色が特徴で、コクのある甘口。オンザロックやソーダ割でも楽しめます。白杉酒造さんの『丹後のヒカリ』(写真・右)はコシヒカリで醸したお酒。酒米ではなく、食米が使われています。あっさりとした口当たりで食事を邪魔しない、こちらも飲みやすいタイプですね。最後の『玉川』(写真・真ん中)は、お米の旨味を凝縮したような重みのある味わい。イギリス人の杜氏さんがいることでも話題の木下酒造さんです。
原材料やその土地の風土、つくる人、それぞれに特有のストーリーがあるので面白いですよ。当店の日本酒を通じて、酒蔵巡りの気分も楽しんでいただきたいですね」。


「三種飲み比べセット」

 

AIがあなたに合ったお酒を教えてくれる

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日本酒ソムリエAI「カオリウム for Sake」


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「十五蔵の利き酒セット」

AIに頼らず、自分の舌で好みのお酒を見つけたいという方は、好みの3種が少量ずつ飲める「三種飲み比べセット」(1,600円)や、「十五蔵の利き酒セット」(2,500円)も朝から提供しています。

「別邸御膳」は朝7時から始まり、ラストオーダーは14時。つまり昼食としても利用できますが、ここはやはり早起きしてリッチな朝食で心もお腹も満たしてから、たっぷりと京都観光を楽しんでいただきたいものです。


 

基本情報

京都酒蔵館別邸(きょうとさかぐらかんべってい)
住所 京都府京都市中京区堺町通二条上ル亀屋町172
TEL 075-223-2072
営業時間 7:00〜14:30(L.O. 14:00)、17:00〜22:00(L.O. 21:00)
定休日 水曜日


 

ライター情報

五島 望
東京都生まれ、京都在住のフリーランスライター・企画編集者。京都精華大学人文学部卒業後、東京の出版社、京都の編集プロダクション勤務を経て今に至る。紙媒体・Webサイト制作、SNS運用なども手掛ける。