2025年03月31日(月)
【京都・夜観光のススメ企画(②夜のアートスポット)】京都の夜は、個性派書店へ。 第2回 ~「ホホホ座浄土寺店」~
雑貨もCDも取り扱う、こだわりの書店 ホホホ座浄土寺店
夜の帳がおりるころ、京都は昼と違う表情を見せてくれます。このコーナーでは、ミニシアター、書店、ギャラリーなど、夜に訪ねたい文化スポットをご紹介します。
京都市内の夜も開いている個性派書店の2回目。今回ご紹介するのは、銀閣寺近くにある「ホホホ座浄土寺店」です。
本のそばに食品やTシャツ、雑貨がずらり
銀閣寺近くの住宅街、左京区浄土寺にある書店「ホホホ座浄土寺店」。食と生活、芸術や文化から、社会問題を扱う本まで、こだわりの書籍が並ぶ棚は魅力にあふれています。他にも、作家もののカバンや服、生活雑貨から、CD、食品など、他ではちょっと見かけない多種多様な商品を扱っています。セレクトするのは店主の山下賢二さん。2015年にこの地に開店し、本や雑貨が好きな人、近所に住んでいる人、観光客など、さまざまなお客さんがやってきます。「ホホホ座」という店名は、山下さんを含めた4人がつくる編集企画グループの名前からとったのだそう。女性の笑い声のようで、一度聞くと忘れられません。
山下さんは子どもの頃から、本屋さんが好きでした。行きつけの店は、実家の近く、七条通にあった「こま書房」。ここで児童向けのテレビ雑誌やコミック、図鑑、タレント本、ジュニア小説などを立ち読みし、遅くなるとお母さんからこま書房に電話がかかってきて、店主の方に「お母さんが、そろそろ帰っておいでって言うてはるで」と声をかけられたといいます。いろいろなお客さんがやってくる本屋は、子どもたった山下さんが初めてふれる「世間」との接点のようなものでした。
山下さんは高校を卒業後、書店でのアルバイト、編集者、印刷工など、さまざまな職業を経験し、自分が一生できる仕事について考えました。そして結局、子どもの頃から好きだった本屋になったそうです。
店内に入ると、まず平台に詰まれた新刊に興味をそそられ、その上に吊るされたユニークなTシャツ、布バッグにも目が止まります。奥の壁にはかわいい子ども服、右に進むとCDやレコードのコーナーがあり、どれも、じっくりと選ばれたことが感じとれます。
たとえば、全国の納豆を紹介した『納豆図鑑』のそばに本物の納豆が置かれていたり、『台湾レトロ建築さんぽ』『台湾クラフトへの旅』といった書籍のそばに、バラエティ豊かな台湾雑貨が展開されていたり……。本を読むことで、横の雑貨や食品を手にとりたくなり、また本を読みたくなる−−。そんな楽しみ方ができるので、あれもこれも欲しくなって、すぐに予算を超えてしまいそうになります。
書店に足を運ぶ、その体験こそが思い出になる
台湾関連の本のそばに、カラフルな台湾雑貨が並ぶ
こんなに楽しい体験ができる本屋は、他にはありません。山下さんに聞くと、「ネットショップへのアンチテーゼのようなものです。実際にお店に来て棚を眺め、好きな商品を手に取って買う行為は、それ自体がワクワクするし、思い出にもなる。ここでそんな体験をしてほしいです」と話します。
書店を営み20年を越える山下さんは、以前「ガケ書房」という書店を北白川で経営していました。京都のサブカルチャーの発信地として有名な書店でしたが、この「ホホホ座」を営み、山下さんは、幅広いジャンルを扱う「まちの普通の本屋さん」が地域にとって大切だと気づいたそうです。
老若男女が多様な本に出会い、楽しい体験ができる普通の本屋さん。それが「ホホホ座」なのです。
各地には「ホホホ座」の親戚店も
ホホホ座浄土寺店の開店後、大阪府交野市や愛媛県今治市など、なんと全国あちこちに「ホホホ座」ができたそうです。これは支店でもフランチャイズでも、のれん分けでもありません。「ホホホ座を名乗って店をやってみたい」という知人に、「どうぞどうぞ」と言った結果で、山下さんによると「親戚のようなもの」だそう。古書を販売するお店や喫茶、多目的スペースなど、業種もさまざま。なんとも不思議でゆるい関係性ですが、実はこのゆるさも、縛りを望まない山下さんの思いの表れなのです。
京都から、やさしい文化を多くの人に発信するホホホ座浄土寺店。そのやさしさは、「そもそも本屋は勝者ではなく、敗者のための空間では」という山下さんの考えにもとづいています。数々の本との出会い、旅さながらの体験が心を満たしてくれる場所です。
夕暮れのホホホ座浄土寺店。縦にも横にも線1本で「座」までつながる「ホホホ」の文字が印象的
今回のスポット情報
ホホホ座浄土寺店
【住所】京都市左京区浄土寺馬場町71ハイネストビル1階
【営業時間】11時~19時
【休業日】無
【電話】075-741-6501
【HP】
【比較的空いていることが多い時間帯】18時〜19時
【喫煙情報】禁煙
【お子様の同伴】可
【外国人の方に向けた対応】ブロークンイングリッシュ&ボディランゲージ
【店内での写真撮影】商品のクローズアップは不可、他のお客さまが写り込まなければ可
【お支払い】現金、クレジットカード、QRコード決済など
【バリアフリー対応】-
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今回の記事制作担当
『ハンケイ500m』編集部(株式会社ユニオン・エー)