2025年03月12日(水)
【京都・夜観光のススメ企画(③夜のアートスポット)】「染のまち」にある隠れ家的カフェ&バー~NOW&THEN~
夜の帳がおりるころ、京都は昼と違う表情を見せてくれます。このコーナーでは、ミニシアター、書店、ギャラリーなど、夜に訪ねたい文化スポットをご紹介します。
第3回は中京区の二条城近くにある「NOW&THEN」。「染のまち」として歴史ある式阿弥町に位置する、隠れ家的なお店です。ギャラリースペース併設のカフェ&バーで、2022年にオープンしました。広い店内はすっきりとした印象で、ぬくもりが感じられ、看板犬の黒柴、マイルス君をお目当てにくるお客さんも多いといいます。美味しい飲み物や、センスがよい器、座り心地が良いソファーに五感が満たされ、ゆっくりと過ごしたくなるお店です。
黒柴、マイルス君の人懐こさに癒されて
「NOW&THEN」が入っている建物は「式阿弥町(真生)ビル」。建物の北側には、絞り染め専門の美術館「京都絞り工芸館」があります。
「式阿弥町」という町名は、仏教の一宗派、時宗の「式阿弥道場」があったことに由来します。当時、時宗には「阿弥衆」と呼ばれる芸能に優れた人々が全国から集まっていたそうです。文化が息づく街の歴史を感じさせます。
さりげない白い看板が目印
そんな式阿弥町にある「NOW&THEN」。お店はビルの4階にあり、エレベーターはなく階段のみ。入口の看板もさりげなく、「ほんとうにここにあるのかな?」と少しドキドキしながら、階段を上がっていきました。
4階に辿り着き、入り口ののれんをくぐると、予想以上に広々とした空間にびっくり。看板犬のマイルス君が尻尾をふりふり、駆け寄ってきました。ぴんと立った三角の耳、つぶらな瞳が可愛らしく、人懐つこさに癒されます。今年13歳になるマイルス君は、店長の安達健さんにとって、頼もしくて愛おしい「相棒」だそうです。
店長の安達健さん
安達さんは長野県出身。東京の飲食店で働いていましたが、中学校の修学旅行で京都を訪れたときの感動が忘れられず、京都に自分の店を持つことを考えるようになりました。まちを歩くだけで歴史を感じられたこと、またゆったりとした時間の流れに心惹かれたと言います。まちのあちこちに喫茶店があり、日常生活のなかで美しいものを愛でる習慣があることも、自分の理想と合っていると感じたそうです。
シンプルでモダンなのにぬくもりがある
「NOW&THEN」の店内は、安達さんの美意識があちこちに感じられます。コンクリート打ちっぱなしの白い壁、大きな窓、ソファー、ラグ。空間を広々と使い、シンプルでモダンな雰囲気は、ギャラリーとしても、作品を魅力的に見せてくれます。
シンプルでも、無機質で冷たい感じはしません。木のテーブルやいす、五葉松、それにマイルス君のたたずまいが、店全体にぬくもりを与えています。テーブルに置かれたモノクロの写真集や、壁に飾られたアート作品。これらのバランスが絶妙で、いい味を醸しています。
私が訪れた2025年2月14日は、フリーマーケットが開かれていました。「こちらなど、いかがでしょうか?」とばかりに、売り物の小さなぬいぐるみをくわえてやってくるマイルス君。あまりにも可愛くて目尻が下がってしまいます。

ゆっくり流れる時間を楽しみながら、アブサンをいただく
「バータイムでおすすめのドリンクは、ヨーロッパの薬草系リキュール、アブサンです」と安達さんにすすめられ、飲んでみることにしました。
金色のアブサンスプーンに角砂糖を置き、アブサンを注いだグラスの上にのせます。専用の給水器から、ポトン、ポトンと角砂糖に水をたらすと、溶けた砂糖水が一滴ずつアブサンに混じっていきます。真剣な表情でお酒を準備する安達さんを、マイルス君がそばでじっと見守ります。
お酒ができあがるのをじっくりと待つ時間。何と贅沢な時間でしょう。溶けていく角砂糖を静かに眺めながら、ゆったりした時間が進んでいきます。 一口飲むと、薬草の刺激的な風味が砂糖でまろやかになり、すっきりした味わい。甘過ぎる飲み物は苦手な私も、これは美味しく感じます。アルコール度数が高めなので、体はポカポカに。時間をかけて味わいたいお酒です。
アルコールが苦手な人には、自家製ジンジャーエール、オーガニックエルダーフラワーソーダなどのソフトドリンクもあります。自家製アップル&シナモンソーダは、リンゴの甘酸っぱさと、シナモンの香りがマッチして、爽やかな味わいです。
昼のカフェタイムには、自家製プリンなどのスイーツを楽しめます。プリンはエルダーフラワーがほのかに香る、少しかための、しっかりした味わい。ほかにバニラアイスを添えた自家製ベイクドチーズケーキがあり、素朴な甘さにほっとします。
コーヒーは香り高く、すっきりとした苦さ。センスのよい器は手触りもよく、いつまでも感触を楽しみたくなります。
3月7日から3月30日まではヒロ中島さんの「BLACK&WHITE+Another」展が開かれていました。モノクロの世界に色を足すことで、動き始める世界を表現した作品です。
夜に訪れると、昼とはまた違う心持ちを楽しめまする。そんなギャラリーカフェで、至福の時間を味わってください。
今回のスポットの基本情報
NOW&THEN
【住所】京都市中京区油小路通御池下ル式阿弥町122-1 式阿弥町(真生)ビル4F
【営業時間】11時~18時、20時~1時
【休業日】月
【Instagram】https://www.instagram.com/nowandthen_kyoto/
【比較的空いていることが多い時間帯】11時〜14時
【喫煙情報】テラスがございますので、テラスでの喫煙は可能でございます。
【お子様の同伴】可
【外国人の方に向けた対応】-
【店内での写真撮影】他のお客さまが写り込まなければ可
【お支払い】現金、クレジットカード、quick pay 、ID、交通系(Suica、PASMOなど)利用可能
【予約】不可
今回の記事の読者特典
ご注文時に「『夜観光のススメ』を読んだ」とお伝えいただいた方に、「マイルス君におやつをあげる権利」をプレゼント
特典有効期間:2025年12月末まで
ライター・カメラマン情報
『ハンケイ500m』編集部
京都にあるたくさんのバス停のから、毎号1つをピックアップし、そのバス停を起点に半径500mをくまなく探索。 独自の哲学、ポリシーを持った「職人」気質の方々を発見し、そこから見える多様な価値観を発信するフリーマガジン、『ハンケイ500m』を制作・発行しています。
HP
今回の記事制作担当
『ハンケイ500m』編集部(株式会社ユニオン・エー)