夜観光のススメ

2023年11月06日(月)

夜観光

京都・夜観光 エンタメのススメ 〜日本人こそ体験すべき! 花街で楽しむ伝統文化入門〜 「ギオンコーナー」

京都で過ごす夜、芸術・文化などのエンタメ観賞を楽しみませんか?
初めての方も楽しめるよう工夫された能や狂言の舞台を始め、京都の多彩な文化・芸術を楽しめる公演をご紹介します。第5回は『ギオンコーナー』。京都五花街のひとつ祇園甲部で、60年以上にわたって開催されている夜観光プログラムです。




約50分で多彩な伝統文化をダイジェストで楽しめる「ギオンコーナー」です。昭和に開催された東京オリンピックをきっかけに、海外から京都に来るお客様も夜観光を楽しめるよう創始されたプログラムで、昔も今も海外のお客様を中心に人気を誇っています。

 

海外からの観光客のために誕生したプログラム 

紅殻格子(べんがらごうし)に犬矢来(いぬやらい)のお茶屋が建ち並ぶ祇園は、花街らしい風情に歩くだけで心が浮き立つエリア。お座敷に向かう芸妓さんや舞妓さんの姿を見かけることもあり、観光客はもちろん地元の人々にとっても特別な場所です。
四条通から花見小路を南へ行くと、東側にあるのが祇園甲部歌舞練場(ぎおんこうぶかぶれんじょう)。芸妓さんや舞妓さんが芸を披露する明治創始の舞踊公演「都をどり」の開催地としておなじみですが、実は京都の夜観光の元祖ともいえる「ギオンコーナー」も、1962(昭和37)年から61年の長きにわたってこの地で開催されています。



ギオンコーナーは約50分で京都に伝わる伝統芸能である、茶道、華道、箏曲、舞楽、狂言、京舞、能または文楽が楽しめるのが魅力。海外からのお客様だけでなく、日本に住んでいても日常の中ではあまり体験できない、伝統芸能や文化に触れる絶好のチャンスです。
「これだけの数を取り揃えて一度に見る機会は、なかなか無いと思います」と話すのは、プログラムを運営する京都伝統技芸振興財団専務理事の糟谷範子さん。「それぞれの演目の一番わくわくするところをハイライトで見せてくれますのでとっつきやすいですよ。おすすめは前から3列までのプレミアムシート。解説タブレットがつくので、さらに分かりやすいと思います。」

 

祇園甲部歌舞練場の雰囲気も楽しんで

ギオンコーナーは創立以来ずっと祇園甲部歌舞練場の敷地内にある弥栄会館で上演されてきましたが、コロナの流行により長期休演。その間に弥栄会館がホテルに生まれ変わることとなり、2023(令和5)年3月に上演再開する際は、新しく建てた祇園甲部歌舞練場小劇場でのスタートとなりました。

実際に劇場を訪れると、受付はまず祇園甲部歌舞練場別館で行われます。この建物は本館と同時期の1913(大正2)年に建てられた木造建築で、歴史を感じる佇まい。古いながらも華やかさがあり、花街の歌舞練場らしい風情に心が弾みます。
一方ギオンコーナーのために新築された小劇場は、真新しくモダンな雰囲気。座席は165席で、舞台との距離も近く臨場感を味わえる劇場です。舞台が畳敷き風なのも印象的。続々と集まるお客様で、あっという間に満席になりました。



まずは袖にある茶道舞台で、お茶のお点前からスタート。少し時間を置いて舞台の幕があがると、お琴の演奏と華道が披露されます。



前から4列目の右端2席でのみ、茶道舞台で点てたお茶を味わうことができる特別席となっています。
「人気の席で一番に売り切れるんですよ。海外の方がほとんどなのによくご存知だと思います。お菓子は祇園の鍵善良房さんのお干菓子で、季節によって変わります」と糟谷さんのお話しの通り、この日も外国人のお客様がお抹茶を楽しんでいました。お作法の案内が席に書かれているので、初めての方も安心して体験できます。



 

鑑賞を通し、お気に入りジャンルをみつける

お茶、お花、お琴の披露が終わると、舞台の雰囲気は一気に変わり舞楽に。「蘭陵王(らんりょうおう)」という演目が披露されます。派手な唐風の衣装とお面、生の雅楽の演奏に、平安貴族の宴の様子を思い浮かべながら楽しみました。



狂言は、「棒縛(ぼうしばり)」という愉快なお話。台詞は日本語ですが演者の表情が豊かなので海外のお客様もくすくすと笑っており、狂言の楽しさが万国共通であることに感心しました。



その次は京舞(きょうまい)です。普段は舞妓さん2人の出演ですが、取材当日は祇園甲部の秋の公演である「温習会」と日程が重なっていたため、祇園東の芸妓さんと舞妓さんが登場。お人形のような愛らしいお顔、華やかなだらりの帯と着物、指先まで優美な舞に、ただただ見惚れるばかり。修学旅行で訪れたギオンコーナーがきかっけで舞妓さんを志した方がいるというのも、うなずけます。



笑ったりうっとりしているうちに、舞台はあっという間に最後の文楽に。演目は「伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)-火の見櫓(ひのみやぐら)の段-」です。恋人のために火の見櫓の半鐘を打つお七が雪の中、足を滑らせながら櫓に登る場面は圧巻で、人形の姿から鬼気迫るものを感じました。(※月によって文楽又は能が上演されます。)




「ギオンコーナーを伝統文化に親しむきっかけにして欲しい」と話す糟谷さん、「舞台を見てお気に入りの分野を見つけていただければ嬉しいですね。そして次は能の公演をご覧になるとか、茶道を体験するとか、もう一歩進んで楽しむことをおすすめします」

ギオンコーナーでは、ウインタースペシャルとして12月〜3月上旬は文楽や能の上演が無くなり、代わりに公演が終わってからお客様全員が舞妓さんと記念写真を撮れるのだそうです。



花街からこうした協力が得られるのも、祇園甲部で歴史を紡いできたギオンコーナーだからこそ。今日の公演で興味を持ったジャンルを深めるのはもちろん、冬のギオンコーナーに再訪するのも、次の京都旅のお目当てになりそうです。

 

インタビュー



糟谷範子
公益財団法人京都伝統技芸振興財団
専務理事

 

公演のご案内

ギオンコーナー
会場 祇園甲部歌舞練場小劇場
住所 京都東山区祇園町南側570-2
アクセス 市バス「祇園」下車、徒歩約7分
京阪電車「祇園四条」下車、徒歩約7分
スケジュール・チケット予約は公式ホームページにてご確認ください
https://www.ookinizaidan.com/


 

ライター紹介

白須 美紀
京都市生まれ、宇治市在住。社寺、祭、芸能、きもの、京料理、京菓子といった京都ならではの文化を取材し、雑誌やウェブサイトなどに寄稿。近年は工芸ライターとしても活動し、ものづくりで文化を繋ぐ人々を紹介している。また、職人や作家と「いとへんuniverse」を立ち上げ、西陣織の一技法である西陣絣(にしじんがすり)を伝える活動も行っている。

 

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