夜観光のススメ

2023年10月16日(月)

夜観光

京都・夜観光 エンタメのススメ ~誰もが親しめる古典芸能「市民狂言会」~

京都で過ごす夜、芸術・文化などのエンタメ観賞を楽しみませんか?
初めての方も楽しめるよう工夫された能や狂言の舞台を始め、京都の多彩な文化・芸術を楽しめる公演をご紹介します。第3回は『市民狂言会』。その名のとおり、京都市民をはじめ、誰もが狂言に親しめる機会として京都市が主催している狂言会です。8月に行われた公演に行ってきましたので、その時の様子をご紹介します!




大蔵流茂山千五郎家・忠三郎家の協力を得て、1957年にはじまり、今年でなんと67年目!年4回の公演はいずれも金曜日に開催され、夏休みにあたる8月公演以外の3公演は夜の開催。仕事帰りにも、京都観光・散策の「締め」にもおすすめの、京都ならではの夜のエンターテインメントです。

 

京都に来たなら触れてほしい伝統芸能の魅力

「市民狂言会」会場の観世会館。開場されてぞくぞくと入場する観客の顔触れは老若男女実にさまざまです。常連さんらしき方も多いですが、目につくのはファミリーに加え海外の方に加え留学生らしき若者の姿。客席はほぼ埋まり、場内は開演を待つわくわく感に満ちています。

「伝統芸能には、日本古来の風習や人情、喜怒哀楽の表現が色濃く残っています。何百年も前の演劇なのに、今なお日本人の心に響き、笑いを誘い、感動を呼ぶ。時代が変わっても、人の心を揺さぶるものはさほど変わっていない。古典芸能はまさにその点を演じるので、観客の心をくすぐるのだと思いますね」と話すのは、大蔵流狂言師の茂山千五郎さん。




そうした伝統芸能の魅力に触れるなら京都はうってつけだと言います。「なかでも狂言は、この市民狂言会をはじめ、一年を通してあちこちで狂言会が開催されています。社寺への奉納狂言もありますから。」

 

「市民狂言会」でしか観られない? レアな演目

ではこの「市民狂言会」人気の秘密は何でしょう。これほど幅広い客層を得ている理由をうかがうと、「やはり京都市主催の狂言会ということで、料金がリーズナブルです。それが一番の魅力ですよ。年間の通し券だとさらにお得ですから」と笑う千五郎さん。たしかに敷居が低くなるとリピーターが増え、若い人や外国人にも鑑賞しやすくなり、客層が広がるのも頷けます。

「大蔵流の狂言は約200曲の演目がありますが、よく上演するのはそのうちの100曲くらいです。あとの100曲については、あまり受けないと判断して上演していないわけですが、市民狂言会は公演回数が多いので、普段お目見えしないそうした演目を入れることがあります。つまり、他の狂言会では観られないレアな演目を観ていただけるチャンスが市民狂言会にはあるんですよ」



 

わからなくても平気! 肩の力を抜いて大笑い

「市民狂言会」はさまざまな楽しみがあることがわかりましたが、それでもやはり古典芸能を観るとなると構えてしまいがちです。下調べや予習をしておかないと十分に楽しめないのでは、という不安がよぎりますが、千五郎さんは「狂言に限って言えば、むしろ何もせず、気軽に観にきていただいたほうが楽しめると思います」ときっぱり。「会場で配布するパンフレットをご一読いただければ十分です。今は英文のものも配布しています」。

その言葉を裏づけるように、開演前のロビーでは、英文解説を一心に読む外国人客の姿が散見できました。
舞台が始まると、するすると滑るように登場する狂言師にわくわくします。そしてその大きな声や口調の迫力、また言い回しや表情そのものがあまりに面白く、思わず大笑いせずにはいられません。



 

観賞後は狂言をサカナにお喋りを

「市民狂言会」の公演時期は6月、8月、12月、3月。回ごとにその時どきの季節を感じられる演目が組まれています。
「晩秋、紅葉の名所をあちこち散策したその夜に、狂言『栗焼』を観るというのはいかがでしょう」とにこやかに話す千五郎さん。なるほど一日の終わりに大笑いすれば、昼間の疲れも吹っ飛び、癒されそうです。「舞台を観る楽しみは、観賞後の余韻に浸ることも含まれます。一緒に観た人がいれば、ぜひ観てきたばかりの狂言をサカナに一杯飲みながら感想を披露しあって、おしゃべりを楽しんでもらいたい。あるいは、昔の風情が残る夜の花街――祇園や縄手や新橋をひと歩きするのもお勧めですよ」




たしかに、狂言会観賞の前と後では、京の街並みが違って見えるかもしれません。気軽に古典芸能に触れられる「市民狂言会」。次回の夜のお出かけメニューに加えてみてはいかがでしょうか。

 

インタビュー



十四世 茂山 千五郎(しげやま せんごろう)
4歳の時に『以呂波』のシテにて初舞台。その後『三番三』『釣狐』
『花子』『狸腹鼓』を披く。過去には『花形狂言会』『狂言小劇場』『心・技・体、教育的古典狂言推進準備研修錬磨の会=TOPPA!』また若手能楽師による能楽グループ『心味の会』を主催し、狂言のみならず能楽のファン開拓にも力を注ぐ。現在は『茂山狂言会』『Cutting Edge KYOGEN』、弟茂との兄弟会『傅之会』、落語家桂よね吉との二人会『笑えない会』を主催し、幅広い年代層へ狂言の魅力を伝える。また上海京劇院・厳慶谷や川劇変面王・姜鵬とのコラボ公演など、他ジャンルとの共演も精力的に行う。
平成28年 十四世茂山千五郎を襲名
 

公演のご案内

市民狂言会
会場 京都観世会館
住所 京都市左京区岡崎円勝寺町44
アクセス 地下鉄東西線「東山駅」下車 徒歩約5分 他
スケジュール 令和5年12月8日(金)、令和6年3月8日(金)
チケット 前売り券:S席4,000円、A席3,000円、当日券:各500円増 高校生以下:1,000円、その他学生割引あり
URL 京都芸術センター https://www.kac.or.jp/
チケット予約(第272回)
 ・チケットぴあ https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2304880&rlsCd=001&lotRlsCd=
 ・ライヴポケット https://t.livepocket.jp/e/m-d1r 
 ・京都芸術センター窓口(窓口:午前10時~午後8時) 他
問合せ先
 京都芸術センター(窓口:午前10時~午後8時)
 (TEL:075-213-1000)


 

ライター紹介

岡本 千津(おかもと ちづ)
京都市中京区生まれ。生まれた家に今も住む。よろず請け負いライター兼仏日翻訳者兼出版社エディション・エフ代表。「言葉は大事。言葉は大切。」を信条に日々読み、書いている。


 

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