夜観光のススメ

2022年10月01日(土)

夜観光

京都市ビジターズホストがおススメする夜観光 四条烏丸・河原町エリア 「夕暮れの街で三条通モダン建築群を見てあるく」

三条通はおしゃれなブティックが軒を連ねる、京都市民に人気のエリア。古くは平安京の三条大路、里御所や院御所が置かれたこともありました。江戸時代になると、東海道五十三次の終点三条大橋から西の嵐山をつなぐ、物流に欠かせない幹線道路になりました。明治から昭和初期にかけては銀行や郵便・電話局、新聞社などの近代建築が建ち、市内有数の繁華街に。京都は戦時中空襲を受けていないため、これほどの数のモダン建築がそろう三条通は全国でも珍しい存在とのこと。
周辺エリアの散策に便利な「ホテル モントレ京都」を起点にした、おすすめのモデルコースをご紹介。ホテルに泊まって、夜の帳が下りる前、街燈がほのかに照らす通りを歩いて、時間旅行に出かけましょう。



歩いて楽しむ三条通のレトロ建築群

 昼間の観光を早めに終え、ホテルでひと休みしたら、夕暮れの街へお散歩に。烏丸通を北へ進みます。
三条通の一筋目の角にあるのが1902年建築の「中京郵便局(旧京都郵便電信局)」。ごつごつとせり出した石の装飾からは剛健さを感じます。昭和期に全面改築を逃れ、日本初の「ファサード保存」として外壁が保存されました。窓口営業時間内であれば、中にある壁面保存の工事の様子や平安京の遺物を見学できます。

東に進むと見えてくるのが「京都文化博物館(旧日本銀行京都支店)」(1906年築)。赤いレンガ造に白い御影石の縞模様と窓や屋根の緑青が程よいアクセントに。のちに東京駅を設計した辰野金吾デザインと聞けば納得の、優美な姿が見事に残っています。



堺町通の角には、黒い看板に白抜きの分銅印と「足袋」の文字が目を引く「分銅屋足袋」。こちらはモダン建築ではなく、うだつや屋根付きの看板を備えた町家。江戸時代から続く足袋の老舗の矜持が感じられる建物です。
柳馬場通の手前には「京王京都三条ビル旧棟(旧日本生命京都支店)」。こちらも辰野金吾が手掛けたビルで、赤レンガに石を貼ったもの。塔屋部分と東側、西壁の一部が残っています。



SACRAビル バー雪月花:モダン建築で楽しむオーセンティックな時間

三条富小路にある「SACRAビル(旧不動貯蓄銀行京都支店)」は、1916年建設。幾何学模様の繰り返しなど、時代の先端を行くデザインを取り入れた大正建築です。このビルの1階にあるバー「雪月花」のオーナーは建築家。店内は4つに分かれていて、銀行時代の窓や柱をそのまま残しているサロン、アールデコ調のロフト、和紙アーティスト・堀木エリ子氏プロデュースの明かりが優しく照らす地下など、それぞれ意匠が違います。中でもサロンは天井が高く、ゆったりとした時の流れを感じながらお酒を楽しめる貴重な場所です。


基本情報

雪月花
【住所】京都市中京区三条通富小路西入ル中之町20
【営業時間】19:00~2:00 不定休
【アクセス】・地下鉄東西線「京都市役所前」駅8番出口より徒歩7分
       ・地下鉄烏丸線・東西線「烏丸御池」駅5番出口より徒歩10分
【電話番号】075-231-0070

富小路通の南側で存在感を放っているのが1890年建築の「旧家邊徳時計店」。三連半円アーチの窓装飾、アールが美しいショーウインドウの腰壁や透かし彫りなど個性が光ります。明治期の京大工の創意と工夫がうかがえる、当時としては珍しい西洋風の商業建築です。

1928ビル:昔ニュース、今アートの発信地

煉瓦造と石造のモダン建築が並ぶ中、異色の存在なのが「1928ビル(旧大阪毎日新聞社京都支局)」。その名の通り1928年、京都建築の父と言われた武田五一の設計。大阪毎日新聞社の旧社章をモチーフにした星型の窓やバルコニーなど、親しみやすいデザインが見られます。
1998年の新聞社移転の際に解体の危機に瀕しますが、ギャラリー、シアター、アパレルショップ、カフェレストランが入る文化発信ビルとして生まれ変わりました。
「同時代ギャラリー」は19:00まで開いているので時間が合えば寄ってみては(日曜日は17:00まで)。23:00まで営業のカフェ「アンデパンダン INDÉPENDANTS」は多くのアーティストたちにより創建当時の姿に復元され、新たなデザインが加わり誕生しました。
3階の劇場では年齢も国籍も超えて楽しめるノンバーバル劇「ギア」が上演されています。曜日によっては夜公演もあります。劇場で繰り広げられる不思議な空間の旅へ出かけてみませんか。


基本情報

【住所】京都市中京区三条通富小路西入ル中之町20
【営業時間】同時代ギャラリー:12:00~19:00(日曜日のみ17時まで)月曜休館
         INDÉPENDANTS(カフェ):12:00~23:00 
         ギア劇場 ※開催日により異なります。HPでご確認ください。
【アクセス】地下鉄東西線「京都市役所前」駅 ZEST8番出口から南へ徒歩4分
         阪急電車「河原町」駅 10番出口から一筋西を北に徒歩8分
         京阪電車「三条」駅 6番出口から西へ徒歩6分
【電話番号】代表:075-256-6155
        ギア:075-254-6520(チケット窓口 0120-937-882)



新風館:モダン建築×隈研吾

1928ビルで三条通を折り返し、ホテルへ戻りましょう。烏丸通の手前の一角には「新風館(旧京都中央電話局)」。エースホテルの入り口を過ぎ、烏丸通の手前にある新風館への入り口から入ってみると、トンネルを抜けて森に入っていく気分が味わえます。
2001年に商業施設として生まれ変わった後、2020年に隈研吾氏の建築デザイン監修で再度リニューアルされ、ホテル・映画館・レストラン・ショップで構成される複合施設になりました。

 

基本情報

新風館
【住所】京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2
【営業時間】※店舗により異なります。HP等でご確認ください。
【アクセス】地下鉄烏丸線・東西線 「烏丸御池」駅 南改札口直結
【電話番号】075-585-6611
 

 

「ホテルモントレ京都 のプランはこちら」(日本旅行サイト)


ライター紹介

福住 典子(ふくずみ のりこ)
京都市ビジターズホスト、全国通訳案内士(英語)。京都生まれの京都育ち。大学卒業後京都を離れるが、2009年京都に戻って一念発起し通訳ガイドに。
趣味は美術館巡りと低山歩き。初対面の印象は「いかにも京おんなっぽい」。でも、「いけず」やあらしまへん。