王朝文学の香り
王朝文学の香り
おうちょうぶんがくのかおり
2008年は、源氏物語が読まれていることが分かってから1000年というので、千年紀の記念行事が多彩に繰り広げられ、源氏物語ブームになりましたね。日本が世界に誇る古典文学といえます。この源氏物語に当時の貴族たちが食べていた菓子が登場してきて、今日も伝えられています。いわば王朝文学のみやびが楽しめる菓子です。場面は、柏木(かしわぎ)が光源氏の邸宅の六条院で若い公達(きんだち)と蹴鞠(けまり)遊びをしているとき、恋する女三(おんなさん)の宮(みや)を御簾(みす)のはずれから垣間見る有名なくだりです。遊び終えた公達は菓子や果物をはしゃぎながら食べるのですが、その菓子が「椿餅(つばきもち)」でした。当時は「つばいもちひ」といっていました。もち粉に甘葛(あまずら)をかけたものを椿の葉ではさんでいたようです。宇津保物語にも登場してきます。いまは道明寺粉(どうみょうじこ)を湯で戻した生地で、こし餡(あん)をつつみ椿の葉ではさみます。肉桂(にっけい)をまぶして風味をつけたりもします。菓銘も、つややかな葉の緑の色彩も、なんともいえない美しい菓子ですね。