重陽のころ
重陽のころ
ちょうようのころ
京菓子は季節感をとても大切にします。9月に入り、朝夕少し涼を感じるころ、二十四節気の一つ、白露(はくろ)となります。京菓子の「白露」は秋草に置いた露の風情を感じさせ、残暑も忘れそうです。粒餡(つぶあん)を芯(しん)にして、緑色に染めた白餡のそぼろでつつみ、上に錦玉(きんぎょく)のそぼろをのせてつくります。9月9日は重陽(ちょうよう)の節句ですね。菊の節句ともいわれ、奈良時代から宮中では観菊の宴が催されました。また前日の夜に菊の花に真綿をかぶせ、下りた露に菊の香りを移して顔をぬぐうと、老いを去り命が延びるというので、平安時代の貴族の女性たちが盛んに取り組んだことが、王朝文学に描かれています。いまは廃れてしまった、そんなゆかしい行事を思い起こさせるのが京菓子の「着(き)せ綿(わた)」です。こなし生地や、白餡に求肥(ぎゅうひ)を加えて練った練り切りの生地で、餡玉をつつんで、ヘラで菊の形に仕立て、上に白餡のそぼろをのせます。