新春
新春
しんしゅん
初春は厳かな中にも華やぎのある正月飾りに、大人も子どもも心があらたまります。年賀の茶釜を懸ける家もあります。一家そろって心も新たにいただく茶菓子には「花びら餅」がよく使われます。「菱葩(ひしはなびら)」ともいい、明治のはじめに初めてつくった粽匠(ちまきしょう)の店では「御菱葩(おんひしはなびら)」と呼んでいます。丸く薄い白餅に紅色の菱型の餅を重ね、甘く煮た牛蒡(ごぼう)と味噌餡(みそあん)を置いて折りたたみます。いまは餅を求肥(ぎゅうひ)にしている京菓子店が多いですね。求肥とは、白玉粉などを水で溶き、蒸して砂糖や水飴(みずあめ)を加えて練った柔らかい餅です。中の紅がほんのり透けて美しいものです。京都の茶道各家元では初釜が始まりますが、裏千家の茶会には、この菓子が使われます。もとは宮中の正月行事で公家百官に配った菱葩に由来します。正月はこのほか、その年の干支(えと)や歌会始の御題(おだい)にちなんだ「干支菓子」や「御題菓子」が京菓子店の店先をにぎわします。菓匠(かしょう)たちのセンスが小さな菓子のデザインにこめられていて、和菓子店めぐりが楽しくなります。