蒸しずし
蒸しずし
むしずし
白い湯気をあげた、ほかほかの蒸しずしは、冬の京都の風物詩。もともとのルーツはどうやら大阪にあるようですが、寒さの厳しい京都の土地柄にうまく馴染んだのでしょう。今では季節になると、あちこちのすし屋で食べることができます。ただし、この蒸しずしは、単に冷たいちらしずしを温めるというわけではありません。京都人の始末の精神が生んだ食べ物というわけでもないのです。蒸してさらにおいしくなるように、それに適したしっかりした味がつけてあり、生ものは入りませんが、刻んだ穴子がたっぷり入るなど、意外とぜいたくなすしなのです。店によって甘みがきわだったり、あっさりしていたり、それぞれを食べ比べるのも楽しみの一つ。「蒸しずし始めました」という張り紙を見るたびに、冬がやってきたことを実感する、ささやかなごちそうです。