京都市メディア支援センター

京都の映画文化と歴史

第19回

洛南に見るロケ地

京都市から南へ足を伸ばすとそこは洛南。この地域周辺には、他に類を見ない、独特の情緒が醸し出されたロケ地が点在しています。


洛南に見るロケ地
場所:八幡市~京都市伏見区
(写真は流れ橋での撮影風景『異国物語ヒマラヤの魔王』)区
(1956/河野寿一監督/中村錦之助出演)


<『緋牡丹博徒鉄火場列伝』(1969年/山下耕作監督/富司純子出演)>

代表的な洛南のロケ地は「木津川流れ橋」。全国でも数少ない"流れ橋"の風景が見られます。正式名を「上津屋橋【こうづやばし】」と言い、全長356.5m、幅3.3mの日本で最も長い木造橋です。


<『新蛇姫様 お島千太郎』(1965年/東映/沢島忠監督/美空ひばり出演)>

その呼び名の通り、この流れ橋は木津川が増水して水に浸かると、橋桁が自然に外れて筏のように流れる仕組みになっています。
長大で欄干のない橋の景観も一種独特で、今では時代劇のロケ地としても有名な場所となりました。周囲には高い建物もなく恵まれたロケーションです。時には富士山を背景に合成して東海道を始めとする、旅のシーン、出会いのシーンなど様々な場面で撮影されています。(『あしやからの飛行』(1964年/アメリカ/M・アンダースン監督)、『眠狂四郎 女妖剣』(1964年/大映/池広一夫監督/市川雷蔵出演)等)
また下流へ向うと宇治川と合流し、さらには桂川と合流して淀川になります。近代的な建物の少ないこの地を歩くと、京都で撮影された"川のある風景"の多くがここにあると判るでしょう。
洛南には「流れ橋」と並び、特徴的なロケ地がまだまだあります。


<『夜汽車』(1987年/山下耕作監督/十朱幸代出演)>

まずは「伏見の酒蔵群」。大阪と京都を舟で行き来する交通の要所として発展してきたのが"伏見"です。坂本龍馬の寺田屋事件などでも有名ですが、かつては「伏水(ふしみ)」と言われたほど、昔から清らかな水に恵まれて酒処としても栄えてきました。
現在も建ち並ぶ酒蔵群は、一種独特の景観としてこれまで幾度となく撮影されています。(『越後つついし親不知』(1964年/東映/今井正監督)等)


<『危うし!快傑黒頭巾』(1960年/東映/松村昌治監督/大友柳太朗出演)>

また伏見には、観月橋付近の川原や「御香宮【ごこうのみや】神社」などのロケ地がありますが、中でも特徴的なのが伏見区に隣接する宇治市にある黄檗宗【おうばくしゅう】の大本山「萬福寺【まんぷくじ】」。
広大な寺領には中国風の歴史的景観として様々な建築物を有し、時代劇ロケでは重宝されてきました。
「伏見の酒蔵群」の最寄駅は、近鉄・桃山御陵前駅もしくは京阪・伏見桃山駅。「萬福寺」の最寄駅は、京阪もしくはJR黄檗駅となっています。休日にちょっと足を伸ばして訪れてみてはいかがでしょうか。


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column

京都には100年に渡る映画製作の歴史があります。その間に製作された作品数(TV作品も含めて)を数えれば万余にもなります。そしてその大半が京都市内及びその近郊をロケ地として使用してきたことを考えれば、まさに京都は、その至る処がロケ地です。二条城や京都五山、下鴨神社とその神域といった世界文化遺産から、嵯峨野、東山、西山に点在する寺院・神社といった歴史的景観、鴨川や桂川に代表される風光明媚な水のある風景、花街や町家、更には入り組んだ裏通り迄人々の暮らしが息づく生活空間等々、カメラは100年に渡ってその全域をロケ地として捉えて来たのでした。
しかし少し視点を変えるならば、まだまだ京都には魅力的なロケ地はふんだんにあります。歴史的景観や風光明媚な景観はそのままに、変貌する生活空間としての都市の景観は、新しいドラマの背景に・・・。ロケ地としての京都の魅力は尽きることがありません。


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