京都市メディア支援センター

京都の映画文化と歴史

第14回

保津峡から清滝に見る映画ロケ地

京都市内から少し離れると、そこには雄大な渓谷美が広がっています。大自然に囲まれた絶好のロケ地を巡りながら保養をされてはいかがでしょうか。


保津峡から清滝に見る映画ロケ地
場所:保津峡~清滝~高尾

まずは観光を楽しみながら巡ってみましょう。
嵐山から「嵯峨野トロッコ列車」に乗り、保津峡の見事な自然景観を眺めながらお隣の亀岡市へ。帰りは保津川を舟で下って嵐山に戻ります。この「保津川下り」は観光の目玉であり、映画にもしばしば登場してきました。(『この胸のときめきを』(1988年/東映/和泉聖治監督)等)
(嵯峨野トロッコ列車HP:http://www.sagano-kanko.co.jp/
(保津川下りHP:http://www.hozugawakudari.jp/


<『蒲田行進曲』(1982年/松竹/深作欣二監督/松坂慶子出演)>

「JR保津峡駅」はその保津峡の渓谷を見下ろす位置にあり、山中の無人駅として独特の雰囲気があります。人気がなく緑に囲まれた環境を活かして様々な撮影が行われてきました。(『姉妹坂』(1985年/東宝/大林宣彦監督)等)


<『宮本武蔵 巌流島の決斗』(1965年/東映/内田吐夢監督/萬屋錦之助出演)>

ここからはハイキングコースです。
保津川と清滝川の合流地点「落合」は、急流に岩肌が荒々しくそそり立ち、これまで時代劇やサスペンスの事件現場などで舞台となってきました。(『柳生武芸帳 片目の忍者』(1963年/東映/松村昌治監督)等)
清流「清滝川」には小道が整備されており、上流へ歩いて行くことが可能です。そこは深山幽谷の世界。川の流れも急流から清流、地形も岩場から河原まで様々な表情を見せ、合戦シーンから情緒的なシーンまで幅広く撮影されました。(『新諸国物語 笛吹童子』3部作(1954年/東映/荻原遼監督)等)
清滝川上流へ向うと集落「清滝」があり、ここからは嵐山方面へバスが出ています。また、愛宕山の方面にある「空也滝【くうやのたき】」も、霊験あらたかな雰囲気のロケ地となっています。
清滝からさらに北には、紅葉の名所、高雄があります。この地域周辺には歴史的な名刹がいくつも存在しており、映画でも重要なロケ地となってきました。


高雄山・神護寺

そのうちの一つ「高雄山・神護寺【じんごじ】」は、空海や最澄ゆかりの山岳寺院で、山門へつづく石段や、境内の金堂、多宝塔、大師堂などは、『銭形平次』『水戸黄門』『鬼平犯科帳』などのTV時代劇、そして数多くの劇映画で撮影されています。
(神護寺公式HP:http://www.jingoji.or.jp/)


鳥獣人物戯画

さらには「槙尾山・西明寺【さいみょうじ】」、国宝の鳥獣人物戯画で有名な世界文化遺産「栂尾山・高山寺【こうざんじ】」へと、映画の舞台は続きます。
神護寺を含めたこれら三尾の名刹は、美しい自然景観とともに今後もスクリーンに登場し続けることでしょう。


MAP


column

昨今、全国各地にロケを支援するための"フィルム・コミッション"が設立され、映画・TVのロケ誘致が盛んです。多くの都市では特定の場所をロケ地として発信していますが、大量の作品を百年に渡って作り続けて来た京都では、京都のまち全体がロケ地であり、同じ場所が様々なシチュエーションで使用され続けてきました。
落合という場所も、恐らくこれまで何百本という作品のロケ地として画面に登場して来た筈です。しかし多くの観客には、その頻度は決して判らないでしょう。実はそこが映像の魔術。作品のテーマに沿いカメラのアングルを変え、構図を変え、落合は伊賀の山中になり、信州伊那谷に変貌します。
さて、貴方なら、どこのポジションから落合の景観を捉えるでしょう。それにチャレンジしてみるのも一興ではないでしょうか。


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