京都市メディア支援センター

京都の映画文化と歴史

第10回

大映京都撮影所跡地

日本映画は黒澤明監督の『羅生門』(1950)を先頭に国際賞を次々と受賞し、戦後黄金期を迎えます。これら一連の名作群を生み出したのは、京都にある撮影所でした。日本映画が世界へ羽ばたく源となった記念すべき地を訪れてみませんか。


大映京都撮影所跡地
場所:右京区太秦多藪町
(京都市立太秦中学校周辺)


大映京都撮影所

嵐電・太秦広隆寺駅と帷子ノ辻駅の間にある太秦多藪町。この町の一角に「大映京都撮影所跡地」と刻まれた石碑があります。
この撮影所は、元々は昭和2年(1927)日活の太秦撮影所として建てられたものでしたが、戦時統制により昭和17年(1942)、日活を含む3つの映画会社(新興キネマ、大都映画、日活製作部門)が合併して大映が誕生したのでした。
市川雷蔵、勝新太郎、京マチ子、山本富士子らがデビューしたのもこの撮影所からであり、1960年代には『眠狂四郎』『悪名』『座頭市』などのシリーズが世に送り出されました。
ところが映画産業の衰退とともに経営が悪化。大映は昭和46年(1971)に倒産し、栄光の歴史に幕を閉じることになります。しかし、日本映画史にこの撮影所の残した足跡は実に多大なものでした。



映画『羅生門』ヴェネチア国際映画祭受賞記念碑

その足跡をたどるには、石碑から歩いて2分、京都市立太秦中学校の校門へ歩みを進めてみてはいかがでしょう。校門横に「グランプリ広場」と銘打たれた一隅があり、金獅子像とオスカー像をモチーフにした記念碑が設置され、その由来が記されています。これらは大映京都撮影所で製作された『羅生門』(1950)が1951年のヴェネチア国際映画祭グランプリの受賞を記念したものです。
以降も、吉村公三郎監督の『源氏物語』(1951)、衣笠貞之助監督の『地獄門』(1953)、そして溝口健二監督の『雨月物語』(1953)、『山椒大夫』(1954)と、この撮影所で製作した映画がヴェネチアやカンヌで次々と国際賞を受賞します。京都の映画人たちの技術が世界最高水準であると証明されたのです。


<『仁義なき戦い 完結編』(1974年/深作欣二監督/菅原文太出演)>

グランプリ広場から北へ向かうと、東西の通りに商店街が広がります。その名も「大映通り商店街」。大映京都撮影所の名が残る商店街です。今も昔も撮影所が近くにあり、映画人御用達のお店が並びます。
商店街の皆さんは撮影に協力的で、これまで『仁義なき戦い』シリーズなど、派手なドンパチのシーンも幾度となく撮影されました。また、山田洋次監督が立命館大学の学生さんたちと製作した『京都太秦物語』(2010年/松竹)では、商店街そのものが舞台となっています。
(大映通り商店街
HP:http://www.kinemastreet.com/


三吉稲荷

この商店街沿いには、通称「三吉稲荷」【さんきちいなり】と呼ばれる、小さな映画ゆかりの神社があります。
正式には「三吉稲荷大明神・中里八幡大菩薩」と言い、この地に日活の撮影所が建設された昭和初期、藪の中からみつかった二つの御神体を、当時の映画人たちが一つに集めて祀ったのだそうです。よく見ると、周囲の玉垣には大河内傳次郎、入江たか子、伴淳三郎など、往年の大スターや名俳優の名前が並びます。
境内には「牧野省三先生顕彰之碑」もあります。設立に関わった映画人たちの名前が刻まれていますが、その中の長門裕之、津川雅彦兄弟は、実は牧野省三氏の孫に当たります。
撮影所と共に歩み栄えてきた町“太秦”。この地には、様々な映画の痕跡が残り、今も映画が生み出されています。


MAP


column

映画は総合芸術です。監督や俳優ばかりでなく、映画を作り上げるには様々な分野の人々の力が必要です。
中でも宮川一夫キャメラマンに代表される撮影技術、西岡善信さんに代表される美術の力・・・。それが京都の映画を支えてきた大きな原動力でした。豊かな知識と経験、確かな技術力に裏打ちされた鋭い感性。それが京都の映画人に脈々と受け継がれた伝統でした。
しかし、伝統の力とは常にそれを越えようとする挑戦があってこそ、エネルギーとなります。こんなお話を宮川一夫さん、西岡善信さんのお二人から聞いたことがあります。作品は市川崑監督、市川雷蔵さん主役の『炎上』(1958)。そのラスト、主人公が美の極致と信ずる金閣寺の炎上シーン。儚くも美しい炎をどう表現するか。そこで生まれたのが夜空に金粉を炎として舞わせることでした。圧巻とも言うべきこのシーン。そこに、伝統の力と鋭い感性が生み出す白黒画面の見事な映像美をご記憶の方も多いことでしょう。


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