京都市メディア支援センター

京都の映画文化と歴史

第5回

牧野省三の遺跡を辿る

日本映画の父と呼ばれる牧野省三(1878-1929)。その遺跡を辿る散策は、日本映画の草創期を訊ねる旅につながります。

牧野省三の遺跡を辿る
場所:西陣千本~北野
(写真は千本座。千本座跡地=上京区泰童片原町)


千本座
「千本座跡地」(上京区泰童片原町)

牧野が経営していた芝居小屋が千本座です。真如堂での第一回作品"本能寺合戦"撮影後も、千本座は芝居小屋や活動写真の上映館として使用されました。
現在は跡形もありませんが、千本通一条上る東側の跡地には、通り沿いの街灯に「千本座跡地」の説明プレートが掲げられています。


「千本座跡地」の説明プレート



出世稲荷神社
「出世稲荷神社」(上京区聚楽町)

また、千本通沿いに、豊臣秀吉が聚楽第に創建した「出世稲荷神社」という神社がありました。現在は左京区大原の地に移転していますが、映画関係者が出世祈願に訪れる神社としても知られています。牧野省三と尾上松之助が奉納した石造りの鳥居や石柱が残され、いずれにも二人の名前が刻まれています。
(出世稲荷大社HP:http://syusseinari.or.jp/


高津古文化会館
「高津古文化会館」(上京区今出川天神筋下ル大上之町)

皆さん、映画のエンドロールで"高津商会"【こうづしょうかい】という文字をご覧になったことはありませんか?日本映画において、特に時代劇でかかせない存在が、道具類の貸出を行っている映画美術装飾の老舗・高津商会です。
高津古文化会館では、高津商会が映画美術のために全国津々浦々から収集した貴重な美術品の一部を、文化財として保存しています。
甲冑、刀剣、絵画、陶磁器、着物など、重要文化財を含む様々な美術品が所蔵され、毎年、春と秋に常設展も行っています。
(公式HP:http://www1.odn.ne.jp/kozu-kobunka/
北野天満宮の今出川通を挟んだすぐ南には、「一本うどん たわらや」があります。こちらには牧野省三や撮影所のスタッフも食べに来たそうで、当時のことを記した書籍にも登場しています。(「マキノ雅弘自伝 映画渡世・天の巻」(マキノ雅弘著)、「京都花園天授ヶ丘マキノ撮影所ものがたり」(並木鏡太郎著))
風格ある建物は江戸時代のものと言われ、昔からつづく太く独特の麺とともに歴史を感じさせられます。


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高津商会の始まりは、明治45年(1912)、北野に横田商会・法華堂撮影所が建設された頃にさかのぼります。
当時古道具屋をしていた高津梅次郎氏の敷地を、牧野省三が撮影所への近道として通っていた折、映画用に道具を借りたのが二人の関係の始まりだったと言われています。やがて交流は深まり、牧野の要求も本格的になりました。
それまでのつくりものの道具類も、本物を揃えるようになり、息子に当たる高津義家氏が全国津々浦々を巡り美術品を収集。高津商会へと拡大していきました。


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