夜観光のススメ

2025年03月12日(水)

夜観光

【京都・夜観光のススメ企画(③夜のアートスポット)】「京都の夜はアートを楽しもう」第2回~丸善京都本店~

小説『檸檬』ゆかりの書店&カフェへ。町なかの大型書店は、夜になると穴場

美術館やギャラリーとはひと味違った体験ができる「アート」なスポットをご紹介。2回目は、小説『檸檬』の舞台となった「丸善 京都本店」です。  



観光地をまわって夕方過ぎ。歩き疲れてもいるし、どこかでゆっくり休みたい。でも、夜の四条河原町近辺でそんな都合のいいお店なんてあるわけが……それが、あるんです。場所は河原町通蛸薬師を北に上がったところ。「京都BAL」の地下に店舗を置く総合書店の「丸善 京都本店」です。地下2階には「MARUZEN cafe 京都店」まであり、買った本をのんびり読める書店×カフェという組み合わせ。日中は来店する方が大勢いる大型書店ですが、意外にも夜は穴場です。

いつの日もどこかに『檸檬』コーナーあり

そんな「丸善 京都本店」をおすすめする一番の理由は、小説『檸檬』の聖地として親しまれているから。

“どこをどう歩いたのだろう、私が最後に立ったのは丸善の前だった。”
梶井基次郎小説『檸檬』より一部抜粋

と描かれているように、作中で主人公が訪れてレモンを置いていったのが、京都の丸善です。当時は違う場所での営業でしたが、文芸作品の舞台となった店舗として、いつでも『檸檬』を購入できるように準備万端で整えられています。実際の売場を見てみましょう。

地下1階の一般書フロアにあったのは、棚の大部分を覆う『檸檬』の文庫本。出版社や表紙カバーの異なる『檸檬』の文庫がたくさん並び、棚にはレモンが置かれ、本を買った記念に押したくなるスタンプなど『檸檬』推しの特設棚。いくら広い書店とはいえ、ひとつの書籍でこれだけの面積を占めるあたり、店舗のつよい『檸檬』愛を感じます。


 
『檸檬』の棚は時期によって移動するので、店内を探してみてください。

そして地下2階の専門書フロアにも『檸檬』コーナーが。1階に比べてスペースは小さいものの、文庫本が平積みでどっさり。力の入れ方が違います。美術や医学などあらゆる分野の専門書を取り揃えた地下2階は、基本的に文庫本を置かないそうですが、『檸檬』だけは特別扱いです。
 

 
不思議なのがレモンの入ったカゴ。なぜ置いてあるのか、副店長の中津山淳さんに教えてもらいました。「2015年にこの店舗が10年の空白期間を経て復活オープンした時、売場のそこかしこにレモンが置かれていく現象が話題になりました。『檸檬』という作品は、主人公が悩みの矛先をレモンに当て込んで、洋書売場に置いてくるという話なので、作品と同じようにする方がいらっしゃって。ただ、みなさん、本当にいろんなところにレモンを置かいていかれるので、ずいぶん時間が経ってから、意外な場所でレモンが見つかったりしましたので、とても驚きました。そのためレモンをお供え感覚で入れてもらえるカゴを置くことにしたんです」。
 


中には小説の内容を踏まえて、レモンに爆弾の絵を描いて置いているのだとか。中学校や高校の教科書に『檸檬』が載っているため、最近では女子中高生のファンも増えてきているそうです。
 

カフェでも『檸檬』をどうぞ

 
『檸檬』(税込800円)

さて『檸檬』へのこだわりは地下2階の「MARUZEN café 京都店」にも。それが通年で出されているスイーツの『檸檬』。レモンに見立てた、かわいいフォルムのメニューです。上にクリームシブーストを乗せ、半分くりぬいた中にレモンゼリーとムースが詰まっていて、レモンを丸ごとそのまま使った甘酸っぱい爽やかなおいしさが楽しめます。ほかに季節限定のレモンを使ったメニューもありますが、こちらの『檸檬』が一番人気です。

 
『檸檬』とサイフォンコーヒーのドリンクセットはプラス450円

コーヒー約2杯分が飲めるサイフォンコーヒーとのセットなら、本をゆっくり読みながらカフェでひと休みしたいという方にぴったり。「地下2階の奥にあるので、書店に寄ってからカフェに来ていただく方が多いですね。店舗は20時までしかやっていないため遅くはありませんが、平日だとお客様も少なくてのんびりくつろいでいただけます」と語るのはカフェの店長・丸岡秀和さん。「昼間は『早矢仕ライス』と『檸檬』をセットで注文される常連の方もおられます。また、うちは学生のアルバイトの子が多いんですけど、梶井基次郎が好きでとか、『檸檬』が好きでバイトに来ましたという学生も何人かいまして。お客さんだけでなく、スタッフにもファンがいるんです」と丸善ファンの広がりをカフェでも感じるとか。
ちなみに『早矢仕ライス』とは、丸善の創業者・早矢仕有的(はやしゆうてき)が生みの親といわれる元祖「ハヤシライス」。夜の時間帯は売り切れかもしれませんが、機会があればぜひ味わってみてください。

 
狩野尚信の金碧障壁画「仙人図」の複製画を飾った店内は、和のアート空間

洋書や高級文具など、ほかにも豊富な品揃え

 
ところで丸善といえば「洋書」という方もおられるのではないでしょうか。京都の丸善では、地下2階に洋書コーナーがあり、最近は海外からのお客様が多く、特に日本のマンガの英訳版が人気です。
  
洋書コーナーにはコミックや小説のほかグッズ類もあります

地下1階の高級文具売場も京都の丸善では定番。万年筆の取り扱いが有名で、販売だけでなく、修理の依頼にも対応されています。副店長で文具売場担当の安田径さんに売場を案内していただくと、セーラーやペリカン、パーカーなど至福の品が多数。「ご年配の常連の方が多いのですが、興味をお持ちの方がおられたらお話を聞いて商品をおすすめしています」。ガラスケースにおさまった美しい万年筆はアート作品を見ているかのようです。
 

試し書きができるスペースもあるので、気になった方はぜひ

『檸檬』ゆかりの「丸善 京都本店」は、ありとあらゆる書籍を取り揃えた総合書店。ここに来ればじっくり棚を見ながら気になる本を手に取ってみるなんてこともあるのではないでしょうか。文具やイベントコーナーなどもあるので、時間を忘れていろいろ長居してしまいそうです。
今後もレモンを持ってお店に行っても大丈夫でしょうかと中津山さんに伺うと、「もちろん、大歓迎です。京都本店の大切な文化です」とのこと。みなさんもぜひレモンを持って訪ねてみてください。ちなみに今年2025年は小説が発表されてからちょうど100年目という記念すべき年。「丸善 京都本店」も10周年ということで関連企画が動いているとのことなので、楽しみですね。

 
地下1階一般書フロアは小説などの単行本や文庫本、雑誌が中心。観光関連の京都本コーナーも充実しています

 
お目当ての本があれば、検索機で探すこともできます

インタビュー協力


中津山 淳さん
丸善 京都本店
副店長、洋書担当


丸岡 秀和さん
MARUZEN CAFÉ 京都店店長
 

安田 径さん
丸善 京都本店
文具サポートマネージャー、副店長、文具売場長

今回のスポットの基本情報

【店名】丸善 京都本店
【住所】京都市中京区河原町通三条下ル山崎町251 京都BAL 地下1階・地下2階
【営業時間】11:00~20:00
【電話】075-253-1599
【定休日】年中無休(年末年始除く)
【アクセス】阪急京都線「京都河原町」駅から徒歩7分、京阪本線「三条」駅から徒歩8分、「祇園四条」駅から徒歩9分、地下鉄東西線「京都市役所前」駅から徒歩9分、市バス「河原町三条」バス停下車すぐ
【SNS】X:@maruzenkyoto
【HP】

地下2階
【店名】MARUZEN café 京都店
【営業時間】11:00~20:00(L.O.19:30)

丸善 京都本店とMARUZEN café 京都店についての情報
【比較的空いていることが多い時間帯】平日19時以降
【喫煙情報】丸善とMARUZEN CAFEは不可(京都BAL6Fに喫煙所あり)
【お子様の同伴】可
【外国人の方に向けた対応】CAFÉはメニューに英語表記あり
【店内での写真撮影】他のお客様が写らなければ可能
【お支払い】クレジットカード可(各種QRコード決済は、丸善可、MARUZEN CAFE不可)
【予約】不可
【バリアフリー対応】有
【その他】個室無し

今回の記事の読者特典 

書籍をご購入の方、またはカフェをご利用の方で、「『京都夜観光のススメ』を見た」と書籍又はカフェレジ担当にお伝えいただいた方に、「MARUZEN cafe 京都店 平日限定クーポン」1枚進呈。
※特典期限は、2025年3月31日まで。クーポンがなくなり次第、配布修了。
※クーポン券のご利用は、コーヒー10%割引またはお会計から100円引きのいずれかを一度のお会計でお選びいただけます。次回のご利用時に残りのクーポンをご利用ください

ライター・カメラマン情報

ライティング【渡辺 良】
撮影【吉田 努/清水 耕平/樋野 樹】

今回の記事制作担当

株式会社グラフィック
20年間にわたり京都観光のフリーペーパー「京都いいとこマップ」を発行。現在は、京都いいとこウェブ京都いいとこフォト京都いいとこ動画を運営。