夜観光のススメ

2025年03月06日(木)

夜観光

【京都・夜観光のススメ企画(③夜のアートスポット)】「京都の夜はアートを楽しもう」①~出町座~

本とカフェと映画にひたる、歴史ある商店街にできたカルチャー拠点

美術館やギャラリーとはひと味違った体験ができる「アート」なスポットをご紹介。1回目は映画をはじめとする複合施設の「出町座」です。最後の特典もぜひチェックしてください。


コーヒーを飲みに毎日やってくる地元の常連客や近隣に住む大学生など、さまざまな人が訪れる「出町座」。小さい建物の中で映画上映室と本屋とカフェがコンパクトにおさまっていて、思い思いに過ごすことができる場所です。建物があるのは、スーパーや鮮魚店、花屋、饅頭屋などが並ぶ「出町桝形商店街」。夕方頃まではお買い物に来る主婦の姿が見られますが、夜になると人通も減り静かになります。

そんな商店街の中で、遅くまで営業しているのが「出町座」。客層は幅広く年配の方もいれば、周辺に京都大学や芸大があるため学生が多い印象。カルチャースポットとして親しまれていることがよくわかります。
  出町桝形商店街

 かつて鯖街道の京都の起点として栄えた地域で、アーケードのサバのオブジェがインパクト大


映画は、最寄りの公共交通機関から出る最終バスや最終電車に間に合う時間に終わるように上映スケジュールが組まれているため、夜に観に来ても安心。「特に最終上映は席が空いているので、ゆったり観たい方におすすめです」と語るのは、ここで映画を上映するシマフィルム株式会社の田中誠一さん。上映作品の傾向を伺うと、「かたよらないようにしています」と特定のジャンルにこだわらず多彩なジャンルで構成。一般的に配信されていない『14歳の栞』『大きな家』『FORMA』といった作品を定期的に上映していたり、ほかの映画館で上映が終わった作品であっても長期間にわたって上映していたり、一度は観てみたい作品と出会える貴重な場です。
 

映画上映までのじっくりとした時間

映画チケットは入口横の券売機で購入するようになっていて、チケットを購入したら映画の受付カウンターで座席を予約。上映開始まで1時間以上あっても、館内に本屋とカフェスペースがあるのでじっくり時間がつぶせます。

何だか懐かしい券売機システム

1Fの本棚で書店を営むのは「CAVA BOOKS」。カバブックスと間違われることもあるそうですが、正しい読み方はサバブックス。鯖街道のサバとフランス語で元気?と挨拶する時のサヴァにかけた店名です。本棚には、小説や詩歌、評論や哲学、少し前に刊行された文芸誌など、読み始めたら時間があっという間に過ぎてしまいそうなものばかり。さらに横の棚を見ると、京都在住の詩人が参加している同人誌や、上映中の映画の原作本や関連本コーナーまであり、いろいろ考えて店主がセレクトしている様子が目に浮かびます。

 
 


書店店主の宮迫憲彦さんは出版社にも勤務しているため、出版業界を取り巻く現状をよく知る方。「いわゆる商業出版の楽しさや難しさは日々感じていますが、一方で同人活動のような「小さな出版」の可能性を大いに感じています。文化の発信拠点をコンセプトとする出町座から何かが生まれる、あるいはきっかけになるのではないかと思うと楽しいです」。
 

同人の文芸誌など珍しい書籍の購入が可能です。


1F真ん中にあるのはカフェ「出町座のソコ」。カフェメニューの多くは映画上映への持ち込みが可能で、店主の金沢莉子さん曰く、「けっこう持ち込む方が多いですよ。NGなのは、食べにくいカレーなどのご飯ものですね」とのこと。
 
本棚に囲まれたカフェ「出町座のソコ」

最終上映に持ち込む際は、カフェ営業が夜の19時で終了するため、事前に注文しておく必要がありますが、ここで早めに夕食を取ってそのまま上映待ちというのもあり。食事系ではサンドイッチや手づくりカレーなど充実。飲み物は自家製レモンジンジャーなどソフトドリンクのほかにアルコール類もあります。
ちなみにCAVABOOKSの書籍は立ち読みOKですが、そのままカフェスペースに持ち込まないようにご注意を。気になる本があれば購入し、こちらのカフェで読みながら上映開始を待ちましょう。

『でででサンド』のきゅうり3種は、生、ピクルス、柴漬けタルタルソースがサンドされた人気メニュー
 上映室への持ち込みやテイクアウト用のサンドイッチを入れる箱

上映作品にヒントを得て考案した期間限定メニューもあり

入れ替え時間になると、上映室へ移動。指定した席につくと映画スタッフがスクリーンの前にきて「これより上映をはじめます。携帯電話やスマートウォッチなど電子音が鳴らないようにご配慮ください」とアナウンス。人とのやり取りを大切にする商店街の雰囲気と重なります。
 
この建物のどこにスクリーンがあるのかと思えば・・・地下や2Fで映画を上映しています


映画に関連したメニューがカフェで出されていたり、映画の原作本が置いてあったり、映画を観る機会を少しでも持ってもらいたいという思いが詰まった「出町座」。上映終了後、ここで買った本を読みながら映画の余韻に浸るのもいいですね。京都旅行の空いた時間でふらっと訪れてみるもよし。すぐ近くにある市民憩いの場の鴨川デルタでのんびり過ごして、夕方になったら来てみるのもよし。事前にホームページで上映スケジュールをチェックしておけば予定を立てて過ごせます。夜の映画鑑賞、ぜひお楽しみください。

館内では、出町座オリジナルのグッズや上映作品の関連グッズも販売
 
トーク会など各種イベントも実施されるので、興味のある方は要チェック

インタビュー協力

田中誠一さん
シマフィルム株式会社 製作・配給・劇場支配人

金沢莉子さん
出町座のソコ 店長

 

今回のスポットの基本情報

出町座
【住所】京都市上京区今出川通出町西入上ル三芳町133
【営業時間】初回上映開始の30分前から営業開始(9:00頃)、営業終了は23:00頃。
【定休日】年中無休(年末年始除く)
【アクセス】京阪本線「出町柳」駅5番出口から徒歩5分、地下鉄烏丸線「今出川」駅から徒歩10分、市バス「河原町今出川」バス停から徒歩3分
※自転車でアクセスする方は京都市出町駐車場をご利用ください。
【席数】B1スクリーン42席、2Fスクリーン48席
【HP】
上映スケジュールはこちら
【予約】
電話で映画の鑑賞予約ができます。お名前と来場する人数をお伝えくだださい。
電話:075-203-9862
※上映開始1週間前から上映時間1時間前まで座席指定の予約が可能。
【子どもの同伴】お子さん連れでの来館可
【外国人対応】カフェは英語メニューあり。映画は英語字幕は基本なし
【写真撮影】許可のない無断撮影は禁止
【バリアフリー】1F以外はバリアフリー非対応

出町座1F
出町座のソコ
【営業時間】9:30~19:00 ※定休日は出町座と同じ。
【SNS】    X:@demachizanosoko
Instagram:@demachiza_no_soko

出町座1F
CAVA BOOKS

【営業時間】出町座と同じ。 ※映画の受付カウンターが閉じられるまで書籍の購入が可能です。
【HP】


今回の記事の読者特典


カフェでのご注文、本のご購入、映画のご観覧のいずれかをしていただいて、映画受付のカウンターにいるスタッフに、「『夜観光のススメ』を読んだ」とお伝えください。出町座ステッカー進呈。
※進呈は1人1枚
※2025年5月31日まで有効


ライター・カメラマン情報

ライター情報【渡辺 良】
カメラマン情報【吉田 努】


今回の記事制作担当

株式会社グラフィック

20年間にわたり京都観光のフリーペーパー「京都いいとこマップ」を発行。現在は、京都いいとこウェブ京都いいとこフォト京都いいとこ動画を運営。