京都には個性的な舞台を楽しめる劇場がいくつもあります。伝統的な景観のすぐそばで、いまこの瞬間にしか観られない舞台が上演されています。この記事では、夜のひとときを劇場で過ごしたくなるような、演劇やダンス、アートなどの舞台芸術の楽しみ方と、京都市内のさまざまな劇場を一覧でご紹介します。

蔭山陽太さんが話す、京都の劇場の魅力と楽しみ方
今回、京都の舞台芸術の楽しみ方を案内してくれるのは、「京都で生まれた舞台芸術の灯火を守りたい」という思いのもと、京都駅近くの東九条にある劇場「THEATRE E9 KYOTO」の支配人を務める京都芸術大学教授の蔭山陽太さんです。蔭山さんは、京都の「舞台芸術」の創造環境が危機を迎えようとするなか、「面白い場」としての劇場文化を活気づけるべく尽力されています。
そんな蔭山さんの視点を通じて、京都の劇場の魅力と楽しみ方をご紹介します。

蔭山 陽太
京都市生まれ。大阪市立大学経済学部(中退)。在学中から3年間、札幌市内の日本料理店にて板前として働いた後、90年〜俳優座劇場 劇場部。96年〜文学座 企画事業部長。2006年〜まつもと市民芸術館 プロデューサー・支配人。10年〜KAAT 神奈川芸術劇場 支配人。13年〜18年ロームシアター京都 支配人・エグゼクティブディレクター。17年〜THEATRE E9 KYOTO 支配人。京都芸術大学 美術工芸学科アートプロデュースコース 教授。(公財)高槻市文化振興事業団 顧問。愛知県文化振興事業団 理事。NHK近畿地放送番組審議会 副委員長。98年、文化庁在外研修員(ロンドン)。
「小さな街が生み出す新しさ」
──現在、劇場「THEATRE E9 KYOTO」の支配人を務められておりますが、京都の舞台芸術とはどのように出会われたのでしょうか?
「大阪の大学在学中に先輩が誘ってくれた旧・日本維新派※1の舞台に衝撃を受けたのが、私にとっての舞台芸術の原体験です。その後、友人の勧めで東京・六本木の俳優座劇場に就職し、随分と資料を読んだり、舞台を観たりしたわけですが、その頃“京都の小劇場が面白いらしい”という噂が東京の演劇界にありました。それで毎月のように京都に出向いて小劇場を観て回っていましたが、とにかく楽しかったことを覚えています」
※1 旧・日本維新派
1970年に松本雄吉を中心に日本維新派として旗揚げ。活動拠点である大阪のジャンジャン町に由来する「ヂャンヂャン☆オペラ」と名づけられた表現スタイルの劇団。1987年に維新派と改称し、2017年の台湾・高雄『アマハラ』公演を最終公演として解散した。

──東京で劇場の世界へと飛び込んだということですが、どういった点に京都の劇場文化の面白さを感じたのでしょうか?
「街の“狭さ”に由来する面白さです。ただ小さいだけではなくて、たくさんの大学を抱え、若い方が多い。学生以外にも個性豊かで多様なひとが集まっているように思います。東京に比べると舞台芸術の業界規模自体が小さく、人同士の距離が近いですね。ジャンルの境界が曖昧で混ざりやすいため、他では見られないような実験的なものが生まれてきたのだと感じています」

「異文化としての劇場」
──街の狭さゆえの面白さということですが、その新しさを受け入れる街にも特色があるのでしょうか?
「そう思います。たとえば、京都芸術センターは、当時の若き演劇人たちが休校となっていた小学校をアーティストの創造活動支援の場として活用することを提案し、それが今も引き継がれ地域に親しまれているわけです。とりわけ舞台芸術というのは、地元住民の方々からすると、何やらよくわからない“異文化”として感じられる側面があると思います。私自身、京都の劇場文化を盛り上げるべく、THEATRE E9 KYOTOを立ち上げたわけですが、これも地域のご理解のうえでのことです」
──街の懐深さといったものでしょうか?
「はい。新しいものを拒まず応援する土壌が京都の街にはあるように感じます。“よくわからないけどやってみなはれ”、と。今では古典や伝統芸能と呼ばれるものも、当時としては現代アートだったわけですから」


「なにか面白いことをやっている場所」
──地域のなかの劇場というお話でしたが、国際都市ならではの醍醐味というものもあるのでしょうか?
「舞台芸術は総合芸術と言われます。音楽、ダンス、美術、映像など各領域がそれぞれに世界との交流をもちうる分、世界へと開かれる可能性を存分に秘めています。たとえばダムタイプ※2というアーティスト集団がいますが、京都の大学から始まり東京を介さず海外へと羽ばたきました」
※2 ダムタイプ
1984年京都市立芸術大学の学生を中心に、演劇、ダンス、映像、美術、音楽、デザイン、建築など異なる領域の出身者によって結成されたマルチメディア・パフォーマンス・アーティスト集団。領域横断的なパフォーマンスや、インスタレーションによって世界各地で公演、展示を行う。

──では、観光スポットとして、どのように劇場を楽しめばよいでしょうか?
「注意をする必要があるのは、多くの劇場ではロングラン公演が行われないので、“この劇場ではいつでも必ずあの公演が観られる”というものではありません。そのため、旅行会社や宿泊施設としても案内が難しく、観光される方にとっては公演情報に接しにくいというのが現状だと考えています。しかし、劇場が楽しい場所だ、というのもまた事実です。私たちとしては記憶に残る舞台を目指しております。劇場は一種の“お店”なのです。劇場という場所は動きません」
──これから劇場に足を運ばれる方にメッセージをお願いします。
「道すがら街を観光するなかに劇場があれば楽しいと思いますし、小さな街だからこその楽しみ方ではないでしょうか。とはいえ、いくら地域や世界と交流する文化地盤であったとしても、お客さんがいなければ面白さは広がりません。私がこの世界に進む第一歩となった俳優座劇場でも言われたことですが、ひとがいてこそ劇場が色づくのです。舞台に立つアーティストとお客さんが同じ場を共有し、同じ時間を過ごしてこそ劇場はあるのだと考えています」
地域に支えられ、表現者らの挑戦が色を重ねる京都の劇場の数々。各劇場のスケジュールのなかから、お気に入りの公演をみつけて、“狭い”街の夜に活気づく劇場へぜひ足を運んでみてはどうでしょうか?
京都の舞台芸術が楽しめるスポット一覧
様々な舞台芸術を鑑賞できる、個性豊かな京都の劇場をご紹介します。
ロームシアター京都
2,000席のメインホールなど3ホールと中庭、飲食施設を備える多目的劇場。「劇場文化をつくる」を掲げ、世界水準の公演をはじめ、多様な公演が日々開催されている。

| 住所 | 京都市左京区岡崎最勝寺町13 |
| アクセス | 地下鉄東西線 東山駅下車 1番出口 徒歩10分 市バス32・46系統「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車すぐ 市バス5・86系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」徒歩5分 市バス31・201・202・203・206系統「東山二条・岡崎公園口」徒歩5分 |
| 連絡先 | 075-771-6051 |
| URL |
THEATRE E9 KYOTO
2019年、若手劇団や地域アーティストが挑戦できる場を目指し、東九条エリア活性化の一環として設立。およそ90席のブラックボックス空間で、演劇やダンス、音楽、美術など多様な表現を発信。1階にはカフェを併設し、公演前後の交流や創作の場としても機能している。

| 住所 | 京都市南区東九条南河原町9-1 |
| アクセス | JR 京都駅 八条口から徒歩約14分 東福寺駅から徒歩7分 地下鉄 九条駅から徒歩約11分 市バス16・84系統「河原町東寺道」徒歩3分 市バス 16・202・207・208・84・88系統「九条河原町」徒歩6分 |
| 連絡先 | 075-661-2515 |
| URL |
京都芸術センター
2000年に開設された京都芸術センターは、元小学校を活用した文化施設。若い世代を含む多様なアーティストの制作支援を軸に、展覧会や公演、ワークショップなどを展開し、伝統から現代まで多彩な芸術に出会える場として親しまれています。

| 住所 | 京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2 |
| アクセス | 地下鉄烏丸線 四条駅下車 22・24番出口 徒歩5分 阪急京都線 烏丸駅 22・24 番出口 徒歩5分 地下鉄東西線 烏丸御池駅下車 4番出口 徒歩10分 市バス3・5・201・203・207系統など「四条烏丸」徒歩5分 |
| 連絡先 | 075-213-1000 |
| URL |
ギア -GEAR-
日本発×日本初のノンバーバル(=言葉に頼らない)シアター『ギア-GEAR-』。
光や映像と連動したマイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングなどのパフォーマンスによる感動のストーリーと、セリフを使わない “ノンバーバル”という演出により、小さなお子さまから大人、そして外国の方まで、言葉の壁を越えて楽しむことができます。ロングランで公演実施中。

| 住所 | 京都市中京区弁慶石町56 1928ビル 3階 |
| アクセス | 阪急電車 京都河原町駅 9番出口 徒歩8分 京阪電車 三条駅 6番出口 徒歩8分 地下鉄烏丸線 烏丸御池駅 5番出口 徒歩10分 地下鉄東西線 京都市役所前駅 5番出口 徒歩5分 市バス 4・5・17・205 系統 「河原町三条」徒歩3分 |
| 連絡先 | 075-254-6520 |
| URL |
京都劇場
JR京都駅直結の京都駅ビル内に位置する京都劇場。 客席数941席の劇場にて演劇・コンサートなどのライブエンターテインメントが上演されています。

| 住所 | 京都市下京区烏丸通塩小路下ル 京都駅ビル内 |
| アクセス | JR京都駅 中央改札口 徒歩3分 |
| 連絡先 | 075-341-2360 |
| URL |
京都芸術劇場 春秋座
京都芸術大学内にある本格的な劇場です。歌舞伎の舞台機構(廻り舞台、セリ、花道)及びオーケストラピットを備え、現代演劇やオペラ、ダンスなど幅広いジャンルに対応できる設計が特徴です。質の高い舞台芸術を世界へ発信しています。

| 住所 | 京都市左京区北白川瓜生山2-116京都芸術大学内 |
| アクセス | 叡山電車 茶山・京都芸術大学駅 徒歩10分 市バス5系統/銀閣寺・岩倉行き「上終町・瓜生山学園 京都芸術大学前」 市バス上終町3系統/上終町・瓜生山学園 京都芸術大学前 行き 「上終町・瓜生山学園 京都芸術大学前」下車 |
| 連絡先 | 075-791-9207 |
| URL |
※情報は2026年2月時点のものです
撮影|岡安いつ美
企画編集・取材・執筆|株式会社ツドイ