登場人物その3・わわしい女房

登場人物その3・わわしい女房
とうじょうじんぶつその3・わわしいにょうぼう

庶民の女房はしっかり者、頼りない夫の尻をたたいて、よく働き、たくましく生き抜きます。狂言ではそういう役柄を指して、「わわしい女房」と名付けました。尻に敷かれないまでも会社勤めに追われ、家庭内のことや近所付き合いは女房まかせという男性は今の世でも結構多そうです。また、わわしい女房である方が家庭円満なのかもしれませんが......。『髭櫓(ひげやぐら)』に登場する妻などはその典型でしょう。主役は大髭が自慢の夫ですが、単なる相手役以上の働きをします。夫の髭のために家計の持ち出しが重なり、怒った妻は近所の女たちの力も借りて、熊手や長刀を手に手に夫のところへ攻め寄せます。夫の方も髭に小道具の櫓をかけ、防戦に努めますが、多勢に無勢。櫓は落ち、大きな毛抜きで自慢の髭も抜かれてしまいます。荒唐無稽な話ですが、夫と妻の価値観の違いなど、時代を超えて共通するものがあり、歌舞伎舞踊の「松羽目(まつばめ)もの」にも導入されるなど、たいそう人気のある狂言の一つです。

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