登場人物その2.大名といっても?

登場人物その2.大名といっても?
とうじょうじんぶつその2.だいみょうといっても?
狂言のジャンルの一つに「大名狂言」と呼ばれる演目があります。こちらは大名が主役となり、太郎冠者(かじゃ)はワキの役に回ります。役名は大名といっても一国一城のあるじといった大大名ではなく、せいぜい家臣も2、3人ほどのちっぽけな領主、あるいは名主です。たとえば、「萩大名」という狂言に登場する大名は「この辺りに隠れもない大名でーす」と、名乗りだけは立派ですが、和歌が何であるかも知らぬ武骨者。家来の太郎冠者とともに風流人の自慢の庭を訪ね、萩を見せてもらったお礼に和歌を1首、詠むことになって、さあ大変。とんちんかんな応答を繰り返すので、太郎も居たたまれず、逃げ出します。その時代の世相を風刺したり、成り上がり者を茶化したりするのは狂言の常ですが、相手の弱点をあげつらって笑いのタネにするだけが狂言ではありません。舞台に登場する大名のおおらかさや無邪気さなど、その人間味をもしっかりと描いたところに狂言の世界の魅力を感じとることができるでしょう。