登場人物その1・太郎冠者は大スター

登場人物その1・太郎冠者は大スター
とうじょうじんぶつその1・たろうかじゃはだいすたー
狂言の世界で人気者といえば、やはり太郎冠者(かじゃ)が一番でしょう。彼が登場する舞台は優に100曲を超え、狂言の現行曲の中で半数を占めるほどの活躍ぶりを見せてくれます。わがままで怒りっぽい主人に仕える使用人が主な役どころで、演目によっては横着でずる賢い者もいれば、ふだんは主人をよく助け、忠実に立ち働きながら、時には主人をこらしめ、日ごろのうっぷんを晴らす者も登場します。一例を挙げるなら、歌舞伎でも人気のある『棒縛(しばり)』。肩衣に裾の短い袴(はかま)姿はいつもの太郎冠者ルックです。主人は自分が外出すると、盗み酒をすることを知っていて、太郎と弟分の次郎冠者の2人を棒でしばりつけますが、そこは悪知恵の働く2人のこと。不自由な格好でも酒が飲めることを考えだし、ついには酒盛りを始めます......。ほかにもとんまで失敗を繰り返してばかりの太郎冠者など、性格はさまざまですが、共通してどこか憎めないのが、いかにも狂言の大スターと言えるのでしょう。