狂言から歌舞伎へ

狂言から歌舞伎へ
きょうげんからかぶきへ

能『安宅』が『勧進帳』に、『道成寺(どうじょうじ)』が『娘道成寺』に、そして『土蜘蛛(つちぐも)』が『土蜘』と題名を変え、演出や様式も一変してレパートリーをどんどん拡充してきた歌舞伎。狂言の世界からも多くの名作が相次いで歌舞伎化され、今も繰り返し上演されています。能や狂言をもとにした一連の歌舞伎舞踊は「松羽目(まつばめ)もの」というジャンルを形成するほどです。能舞台を模して、歌舞伎の舞台の背景に枝ぶりを誇示した大きな松が描かれたところから、そう名づけられました。能はほかに『船弁慶(ふなべんけい)』『紅葉狩』『羽衣』など。狂言では『釣針』が『釣女』に、『花子』が『身替座禅』と名を変えて、また『素袍落(すおうおとし)』や『靭猿(うつぼざる)』『棒縛(ぼうしばり)』『太刀盗人』などもそうです。その大半は明治から昭和初期に歌舞伎化されていますが、とくに狂言を原典にしたものは派手で明るく、コミカルなタッチの作品が多いところから、歌舞伎の公演の中でも昼の部も夜の部でも最後の演目「追い出し狂言」として上演されることが多いですね。

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