狂言で使う面と装束

狂言で使う面と装束
きょうげんでつかうめんとしょうぞく
狂言は基本的には役者は面をつけず、素顔で演じますが、それでも30種は超えるでしょう。いずれも狂言らしい表情、愛敬のあるとぼけた味の面が数多く伝わっています。舞台で最も多く使われるのは動物を演じるときの面です。キツネやサル、タヌキなどは顔の特徴をよくとらえています。ユーモアたっぷりに「空吹」(うそふき)と名のつく面は昆虫の蚊や魚の精に。福の神や戎(えびす)さんなど神様の面は荘厳というより満面に笑みをたたえ温かみのあるものです。人間でも老人や女性を表現するのに面を用いることがあります。肩衣に裾の短い袴(はかま)姿。狂言の登場人物でも一番人気の太郎冠者(かじゃ)のこしらえです。肩衣の背中にはトンボとかカブラなど日常よく見かける図柄が大胆洒脱に描かれます。布地は麻。相手役の主人や大名が着る長裃(かみしも)や素袍(すおう)もまた麻を使います。今でこそ麻は上等ですが、昔は庶民的素材だったのでしょう。女性役は絹の上着。白い麻布を頭に巻き、両端を長く垂らすのが狂言独特のスタイルです。