擬音もまたセリフの一部

擬音もまたセリフの一部
ぎおんもまたせりふのいちぶ
狂言は能と常に活動をともにしてきましたから、舞台に大道具もなければ、歌舞伎や人形浄瑠璃(じょうるり)などのような下座音楽もありません。そこで効果音や体を動かすようすも狂言師が自分の口で、つまりセリフの一部として発します。擬音の演技です。これも狂言の特徴と言えるでしょう。いくつか例を挙げてみると、いろんな演目に出てくるのが「アムアムアム」。ものを食べる仕草とともに発せられます。人気曲の『棒縛(ぼうしばり)』では主人の留守の間に太郎冠者(かじゃ)と次郎冠者が「グワラ、グワラ、グワラ」と口にしながら蔵の扉を開けます。これが軽い玄関の戸になると、「サラサラサラ」で済ませます。酒を注ぐ時は「ドブドブドブ」と景気よく声を上げ、最後は「チョロチョロ」。名残惜しそうにも聞こえますね。洗濯の時は「ガワガワガワ」、木を切る音は「ズカズカズカ」、紙をはがす音は「ムリムリムリ」。『月見座頭』なら最後に主役の座頭がくしゃみするところを「クッサメ」と言って、締めくくります。