狂言繁栄の礎・その2

狂言繁栄の礎・その2
きょうげんはんえいのいしずえ・その2

「学校狂言」活動の中心人物が90歳を超えて、今も元気に舞台に立つ人間国宝の茂山千作(せんさく)と、四つ違いの弟で舞台や狂言の制作、演出も手がける千之丞(せんのじょう)の兄弟です。二人の芸風は兄が飄々(ひょうひょう)として舞台に出ただけで笑いを呼ぶ天性の喜劇役者なのに対し、弟の千之丞は張りのある名調子とともに役の性根を的確にとらえ演じる知性派役者と言えます。芸風も性格も対照的な2人が手を携え「学校狂言」を始めました。「お豆腐狂言」の出前です。舞台となる講堂で子どもたちが騒ぐと「静かにせえっ」と叱(しか)るのはいつも兄でした。千作のセリフ回しがしゃがれて聞こえるのは「長い間、そんなことを繰り返してきたからですわ」と、当時を振り返っています。京都市が市民を対象に年数回「市民狂言会」を始めて、2007年で満50年を迎えました。すっかり市民の間に定着した催しです。茂山兄弟が始めた「学校狂言」、兄弟も出演協力して開幕した「市民狂言会」。この二つが今の狂言繁栄の礎となったわけです。

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