狂言繁栄の礎・その1

狂言繁栄の礎・その1
きょうげんはんえいのいしずえ・その1
昨今の狂言ブームの背景に狂言師のテレビ出演があるといいました。東京の野村万斎や京都の茂山千五郎(せんごろう)家の花形狂言師たちがブームの引き金をつくったのは確かです。でも、今から半世紀以上も前、京都を中心に地道に進められていた活動を忘れることはできません。それこそが狂言繁栄の礎となったのです。その主柱にあるのが茂山千五郎家のモットー「お豆腐主義」です。豆腐は高級料亭の食材にも使われますが、同時に家庭の食卓にも夏は冷ややっこ、冬は湯豆腐、関東煮にと、庶民の食欲をおおいにそそってくれます。つまり、上下の隔てなくだれからも愛され、飽きがこない。そんな狂言を目指して、千五郎家は活動を続けてきました。時代は終戦直後にさかのぼります。千五郎家の人々はこれからの日本の国を支える子どもたちに伝統芸能の面白さ、観る喜びを味わってもらおうと、1948年(昭和23)から京都を皮切りに全国の小中学校を巡回して、「学校狂言」を始めました。