能とは双子の兄弟

能とは双子の兄弟
のうとはふたごのきょうだい
能と狂言を単純に比較すると、能が歌舞を主体とした音楽劇で、悲劇性の強い演劇なのに対して、狂言は会話劇であり、喜劇性に富んでいると言えます。この二つの伝統芸能は「能楽」というジャンルでくくられますが、もとはと言えば、猿楽(さるがく)を母体にして生まれた双子の兄弟なのです。兄弟は常に一座を共にしてきました。弟分の狂言は兄に寄り添い、一座の狂言方として能の中で「アイ」と呼ばれる語り部的な役を受け持つかたわら、能と能の間には狂言も上演しました。能の会などで狂言師が果たす役割は今日も同じ形で続いています。狂言だけ単独で上演する「狂言会」が能楽堂やホールで頻繁に開かれるようになったのはごく最近のこと。花形狂言師のテレビ出演などがきっかけの全国的な狂言ブームが支えとなっています。わかりやすく、面白く、古典の香りも味わえる。狂言が今、若い世代で大変人気を呼んでいることが納得できますね。