能は伝統芸能のふるさと

能は伝統芸能のふるさと
のうはでんとうげいのうのふるさと

能楽とともにユネスコの世界文化遺産に登録された人形浄瑠璃文楽(じょうるりぶんらく)と歌舞伎、それに京舞などの地歌舞(じうたまい)で「本行もの」「本行にならって」ということばをよく耳にします。ここで使われる本行とは能の作品そのものや演出を指しているのです。和歌の世界の「本歌どり」と似た意味合いで、日本の伝統文化には先行の芸能や作品を拠りどころとしながら、新しい時代に適合した独自の文化を創造する、まさに伝統が息づいてきました。能とその後に生まれた人形浄瑠璃や歌舞伎、舞踊の間にもそうした事象がさまざま場面で見受けられます。文楽や歌舞伎で繰り返し上演される『平家女護島(へいけにょごのしま)』は近松門左衛門の作。見せ場の「鬼界ケ島」は能『俊寛』がもとになりました。歌舞伎十八番の『勧進帳』は能『安宅』の詞章が長唄(ながうた)や弁慶、富樫のセリフに散りばめられます。地歌舞の『八島』『珠取海士(たまとりあま)』も本行もの。600年の歴史を誇る能はこうして後続の伝統芸能に大きな影響を与えています。

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