表情豊かな面、絢爛豪華な装束

表情豊かな面、絢爛豪華な装束
ひょうじょうゆたかなおもて、けんらんごうかなしょうぞく
主役を演じるシテ方がつける表情豊かな面、西陣織の技が一段とさえる絢爛豪華な装束。能役者の演技とともに、そうした面と装束を客席から間近に鑑賞できるのも能を見る楽しみの一つでしょう。能が動く美術館と呼ばれるゆえんでもあるのです。面は「おもて」と読みます。能の命とも言われ、役者は「鏡の間」で呼吸を整え、面を顔にかけて、演じる役柄の中に没入していきます。その様子は自分を捨て、まるで魂を面に預けるふうにも見えるのです。大別すると、面は翁(おきな)、尉(じょう)、鬼神、怨霊、男、女に分けられ、さらに200種ほどに細分化された面が曲や役に応じて使われています。「安宅」の弁慶のように面をつけない役柄もありますが、その時でも役者は自分の顔を面の代わりとして演じ、決して表情をつくったりはしません。歌舞伎などで役者が身につける着物を衣装といいますが、能では「装束(しょうぞく)」と呼びます。豪奢で色彩豊かな装束は染織技術の発達とともに安土・桃山期に飛躍的に進展しました。