ブームを巻き起こした「京都薪能」

ブームを巻き起こした「京都薪能」
ぶーむをまきおこした「きょうとたきぎのう」
薄暮の空にねぐらへ帰る鳥の鳴き声。耳を澄ますと、パチパチと薪の火のはぜる音が聞こえてきます。東山にこだまする幽玄の調べ。仮設の舞台を取り囲んで、平安神宮の広い境内は人、人、人......。京都ばかりか内外の観光客で客席はぎっしり満員。「京都薪能(たきぎのう)」のいつもの光景が目の前に広がります。京都市と京都能楽会の主催で「京都薪能」が始まったのは昭和25年(1950)のこと。平成21年(2009)の6月でちょうど60回を数えました。今では京都の初夏の風物詩としてすっかり定着していますが、明治以来、長らく途絶えていた奈良・興福寺の薪猿楽から宗教的な儀式は省いて現代風に再興したのがそもそもの始まりです。野外で気軽に能が楽しめる。そんな評判が京都からたちまち全国に広がり、薪能ブームを巻き起こしました。火入れの儀式を始めたのも京都が最初で、ヘルシンキ五輪(1952年)の聖火リレーをヒントにしたとか。薪能は能を見る第一歩としてぜひお勧めの催しです。