一期一会

一期一会
いちごいちえ
亭主と客が過ごす茶会でのひと時は、何よりも得がたい時間です。「一期一会」という言葉は、一生で一度だけの単なる出会いという意味だけではなく、今この瞬間は二度と来ない、今をいかに大事にするかという意味も込められています。お茶を点てる、お茶を飲む、それらは瞬間瞬間の連続です。やっていることは毎回同じ手順であっても、そこに己を生かすところ、呼吸の使い方、間の取り方は稽古を重ねなければできないことです。茶会をひらく前に亭主は、季節や茶会の目的に合わせながら、道具やお菓子などを用意します。亭主は「わざわざ時間をつくってお越しいただきありがとうございます」という気持ちを込めて、客においしくお茶を飲んでいただくよう一所懸命お茶を点てます。客は亭主のそのような姿を拝見いたしますと、自ずと感動を覚えるのではないでしょうか。客はただ茶を飲むだけでなく、「本日は、私どものためにとても素晴らしいお茶をいただき、ありがとうございます」と亭主の心に感謝するなど、風情を楽しみながら、互いに心と心のやりとりを素直に喜びあう瞬間は尊いことと思います。茶席での心遣いは、人として思いやりのある付き合い方を学ぶことができます。皆様もお茶を通じて、心の中を豊かにするきっかけになればと願っています。