茶会に参加して

茶会に参加して
ちゃかいにさんかして

「日常茶飯事」というように、飲食は日常のことであり、生きていくために必要なことです。それなのに茶会ではなぜそんなにかしこまって飲食をするのか......不思議に思う方もおられると思います。お茶の歴史は、中国の唐の時代、帰国した僧侶が茶を持ち帰ったことで、日本の喫茶文化は広まりました。当初お茶は、仏像にお供えしたり、僧侶が修行で喫するところから始まりました。日本の祭礼にもお酒を神仏に捧げ、五穀豊穣を祈り、豊作に感謝をします。直会(なおらい)という言葉がありますように、酒やご馳走(ちそう)、旬の収穫物は、まず初めに神仏にお供えした後、そのお下がりとして地域の人々や家族とお相伴(しょうばん)し、分けあっていただきます。茶の作法にも、自分がお茶を飲む前に、隣りに座る人に「もう一服いかがですか」、「お先に頂戴します」と勧めた後、亭主に「お点前(てまえ)頂戴いたします」と声をかけます。自分は最後にいただくのだという謙虚な姿勢があることに気づかれると思います。さらに、日本の食事文化では、「同じ釜の飯を食う」という言葉がありますように、飲食を契機(けいき)として互いの気持ちを確認し、絆を深めてきました。茶の文化の背景には日本人の生活の中から生まれた思想があるように思います。さらに、飲食とはいえ大自然のいのちをいただくのですから感謝をしてからいただくという心づかいも大切ではないでしょうか。

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